介護職の求人を探すと、特養の募集はとくに多く目に入ります。給料が高めと聞く一方で、介護度の高い方が多くて体力的にきつい、夜勤が大変といった声もあり、自分に務まるのか迷う方も多いはずです。
実際には、特養は原則要介護3以上の方が長く暮らす施設で、仕事の中心は食事や入浴、排泄などの身体介護です。従来型とユニット型で働き方が変わることは、求人票だけでは見えにくい点です。
この記事では、特養の入所要件と人員基準、日勤と夜勤の1日の流れ、令和6年度調査にもとづく給料、きついところと働くメリットをまとめました。
特養への就職や転職を考えている介護職の方、未経験から介護の仕事を始めたい方に向けた内容です。
この記事でわかること
- 特養の入所要件と人員基準、従来型とユニット型の違い
- 日勤と夜勤の1日の流れ、介護職の主な業務
- 令和6年度介護従事者処遇状況等調査にもとづく平均給与額と夜勤手当の目安
- 特養で働くきついところとメリット、向いている人
- 未経験から特養で働き始めるときの流れ
特養とは
特養は介護保険法上の介護老人福祉施設で、常に介護が必要で自宅での生活が難しい方が長く暮らす施設です。主に社会福祉法人が運営しています。在宅復帰を目指す老健とは目的が違い、看取りまで含めて最期の時期を支える施設も多くあります。
原則要介護3以上の方が暮らす
2015年4月から、特養に新たに入所できるのは原則要介護3以上の方になりました。要介護1・2の方でも、認知症や知的障害・精神障害による症状、家族からの深刻な虐待など、在宅での生活が難しいやむを得ない事情があれば、市町村の関与のもとで特例的に入所が認められます。
入所者の多くは食事や排泄、移動に介助が必要で、認知症の症状がある方も少なくありません。介護職員には、安全に移乗や食事介助を行う技術と、体調の変化に気づく観察力が求められます。
人員基準と一緒に働く職種
人員配置基準では、介護職員と看護職員を合わせて入所者3人に1人以上を置きます。看護職員の配置は義務で、医師、生活相談員、栄養士または管理栄養士、機能訓練指導員、介護支援専門員も配置されます。
日中は看護職員にすぐ相談できますが、夜間は看護職員が施設にいないオンコール体制の施設もあります。その場合、入所者の状態を観察して看護職員に連絡するのは夜勤の介護職員です。
従来型とユニット型の違い
特養には、多床室を中心に大きな単位でケアする従来型と、全室個室で少人数のユニットごとに暮らすユニット型があります。ユニット型の1ユニットは原則おおむね10人以下で、同じユニットの入居者を同じ職員が担当する形が基本です。
| 項目 | 従来型 | ユニット型 |
|---|---|---|
| 居室 | 多床室(相部屋)が中心 | 全室個室、共同生活室を囲む |
| ケアの単位 | フロアなど大きな単位 | 1ユニット原則おおむね10人以下 |
| 日中の配置 | 入所者3人に1人以上(介護・看護の合計) | 同上に加え、ユニットごとに常時1人以上 |
| 夜勤の配置 | 入所者25人以下で1人以上、26〜60人で2人以上など人数に応じて | 2ユニットごとに1人以上 |
| 働き方の特徴 | 複数の職員で動くため、困ったときに相談しやすい | 一人ひとりの生活リズムに合わせたケアで、判断を任される場面が多い |
ユニット型では、ユニットごとに常勤のユニットリーダーを置くことも基準で決められています。個別ケアを深められる一方、職員が少ない時間帯は自分で判断する場面が増えます。応募の際は、求人票や見学でどちらの型かを確かめてください。
特養の仕事内容と1日の流れ
特養の介護職の仕事は、身体介護、生活の支援、記録と連携の3つに分けられます。入所者の介護度が高いため、移乗やおむつ交換、食事介助といった身体介護が1日の大半を占めます。次に紹介する日勤と夜勤の流れは2交代制の施設の一例で、時刻や手順は施設ごとに変わります。
主な業務
日々の業務は、入所者の起床から就寝までの生活の流れに沿って組み立てられています。身体介護に加え、暮らしに楽しみをつくる工夫や、看護職員や家族との情報共有も介護職が担います。主な業務は次のとおりです。
- 食事、入浴、排泄、着替え、移乗、体位変換などの身体介護
- 居室の環境整備、シーツ交換、洗濯物の整理
- レクリエーションや季節の行事、個別の機能訓練の補助
- バイタルの確認、体調の観察、介護記録の記入と申し送り
- 看取りの時期を迎えた方への声かけや身の回りのケア
看取りの時期には、看護職員や家族と連携しながら、最期まで穏やかに過ごせるよう支えます。
日勤の1日の流れ
日勤は、職員の数がもっとも多い時間帯です。入浴介助のように人手の要る業務がこの時間に集まり、午前と午後で入浴、食事、排泄の介助が切れ目なく続きます。次の時刻は一例で、早番や遅番のシフトによって前後します。
- 9:00 出勤、夜勤者から申し送り、体調の確認
- 9:30 入浴介助、排泄介助、水分補給の声かけ
- 12:00 昼食の配膳、食事介助、服薬の見守り、口腔ケア
- 13:30 排泄介助、休憩
- 14:30 レクリエーション、おやつの提供
- 16:00 排泄介助、記録、夜勤者への申し送り
食事介助では、一人ひとりのペースに合わせ、食べた量や様子を記録に残します。
夜勤の流れと人数
2交代制の夜勤は、夕方から翌朝までの長時間勤務です。夕食の介助から就寝介助、深夜の巡視と排泄介助、体位変換、起床介助と朝食までを受け持ちます。夜勤の人数は国の基準で決まっており、ユニット型なら2ユニットごとに1人以上で、1人で20人前後を見守る計算になります。
- 17:00 出勤、日勤者から申し送り、夕食の介助
- 20:00ごろ 口腔ケア、着替え、就寝介助
- 22:00〜5:00 定時の巡視、おむつ交換、体位変換、記録、交代で休憩・仮眠
- 6:00 起床介助、着替え
- 7:30 朝食の介助、服薬の見守り、日勤者への申し送り
夜間に急変があれば、状態を観察してオンコールの看護職員に連絡し、指示を受けて対応します。夜勤のタイムスケジュールや注意点は介護職の夜勤の仕事内容|タイムスケジュール・きつさ・向いている人で詳しく解説しています。
特養の給料の目安
厚生労働省の令和6年度介護従事者処遇状況等調査では、処遇改善加算を取得している事業所で働く月給・常勤の介護職員の平均給与額は、特養で361,860円でした。令和6年9月時点の値で、12か月分に直した年収の目安は約434万円です。施設別の平均給与額では最上位でした。
| サービス種類 | 平均給与額(月額) | 年収の目安(月額×12) |
|---|---|---|
| 介護老人福祉施設(特養) | 361,860円 | 約434万円 |
| 介護老人保健施設(老健) | 352,900円 | 約423万円 |
| 介護職員全体 | 338,200円 | 約406万円 |
| 通所介護(デイサービス) | 294,440円 | 約353万円 |
特養は介護職員全体の平均より23,660円高く、デイサービスとの差は月67,420円です。特養で働く介護福祉士の平均給与額は372,960円で、年収の目安は約448万円でした。平均給与額には基本給のほか、夜勤手当などの手当と一時金の月割り分が含まれます。
給与差の一因は処遇改善加算の取得状況です。最上位の加算Ⅰを取得している事業所は全体で45.7%でしたが、特養では80.1%でした。
夜勤手当は施設が独自に決める手当で、公的な統計はありません。労働組合である日本医療労働組合連合会の2025年介護施設夜勤実態調査では、介護職員(正規職員)の2交代の夜勤手当は、回答した特養10施設の平均で1回5,300円、全体では5,973円でした。これとは別に、22時から翌5時までの勤務には25%以上の深夜割増賃金が支払われます。手当の相場や回数の考え方は介護職の夜勤手当はいくら?相場・回数・2交代と3交代の違いで解説しています。
特養で働くきついところ
特養の大変さは、身体介護の負担、夜勤、看取りや急変への対応の3つに集約されます。介護度の高い方が多いぶん、ほかの施設より体を使う介助が多く、夜間は少ない人数で多くの入所者を見守ります。長く関わった方の最期に立ち会う場面があるのも特養ならではです。
身体介護が多く体力を使う
入所者の多くが移乗やおむつ交換に介助を必要とするため、1日に何度も抱える、支えるといった動作を繰り返します。
スライディングボードや移乗用リフトを導入する施設もあり、福祉用具の研修があるかどうかも応募前に確かめたい点です。
夜勤は少ない人数で多くの入所者を見る
ユニット型の夜勤では、基準どおりの配置なら1人で2ユニットを受け持ちます。従来型も入所者の人数に応じた最低人数で、日中よりはるかに少ない職員で対応します。おむつ交換や体位変換が重なる時間帯は、休憩が取りにくいこともあります。
長時間勤務で生活リズムが崩れやすい点も負担です。月の夜勤回数と仮眠の取り方は、面接で確かめておくと安心です。
看取りや急変に向き合う
特養は終の住処となることが多く、入所者の看取りに立ち会う場面があります。長く関わった方との別れはつらく、慣れるまで気持ちの整理に時間がかかるという声もあります。
夜間の急変時には、介護職員が最初に異変に気づき、看護職員に連絡する役割を担います。緊急時のマニュアルや、看取り後に職員同士で振り返る場があるかも確認したい点です。
特養で働くメリット
特養で働く利点は、身体介護の技術が身につくこと、給料の水準が高いこと、職員の多い組織で経験を広げられることです。介護度の高い方へのケアを日々積み重ねるため、どの施設に移っても通用する基本が身につきます。
介護の基本技術が身につく
移乗、食事介助、排泄介助、体位変換といった身体介護を毎日行うため、介護の基本技術を短期間で身につけられます。看取りケアや認知症の方への関わりなど、幅広い経験を積めるのも特養ならではです。
ここで身につけた技術は、老健や有料老人ホームなど別の施設に移っても生かせます。
給料の水準が高い
令和6年度調査では、特養の介護職員の平均給与額は施設別で最上位でした。夜勤手当がつくことに加え、処遇改善加算の上位区分を取得している施設が多いことが背景にあります。
同じ特養でも夜勤の回数や加算の区分で月給は変わるため、求人票では基本給と手当の内訳を確かめてください。
大きな組織で経験を広げられる
特養は主に社会福祉法人が運営し、職員の人数がまとまった職場です。研修や資格取得の支援を設ける法人も多く、ユニットリーダーや主任、生活相談員、ケアマネジャーへと経験を広げる道もあります。
施設ごとの働き方や給料をほかの施設と比べたい方は、特養・老健・有料老人ホームの違い|施設の種類と働き方・給料を比較を参考にしてください。
特養が向いている人と未経験からの始め方
特養は、身体介護の技術を基本から身につけたい方、一人の入所者と長く関わりたい方、夜勤で収入を上げたい方に向いています。看取りまで含めて人生の最期の時期を支えることに、やりがいを感じられる方にも合う職場です。
反対に、リハビリや医療との連携を学びたい方は老健、夜勤を避けたい方はデイサービスのほうが合うかもしれません。老健との違いは老健(介護老人保健施設)の仕事内容|1日の流れ・給料・特養との違いで解説しています。
未経験から特養で働くには
特養の介護職員には資格要件がなく、無資格・未経験から応募できる求人が多くあります。入職後に先輩職員と一緒に動く期間がどのくらいあるかは施設によって違うため、面接で確かめておきましょう。
ただし、医療・福祉関係の資格を持たない職員は、採用後1年以内に認知症介護基礎研修を受講します。入職後に介護職員初任者研修や実務者研修を取り、介護福祉士を目指す方も多くいます。未経験から始める段取りは介護職を未経験から始めるには|資格なしOKの施設と5ステップにまとめています。介護職の仕事全体を見直したい方は介護職の仕事内容とは|1日の流れ・施設別の違い・必要な資格を解説もあわせてご覧ください。
まとめ
特養は原則要介護3以上の方が長く暮らす施設で、介護職員は身体介護と看取りケアを担います。従来型は複数の職員で動く職場、ユニット型は1ユニット原則おおむね10人以下の個別ケアが特徴で、夜勤は2ユニットごとに1人以上が基準です。令和6年9月時点の月給・常勤の介護職員の平均給与額は361,860円で、施設別の最上位でした。身体介護と夜勤の負担はありますが、介護の基本技術が身につき、無資格からでも始められます。
気になる施設が見つかったら、従来型かユニット型か、夜勤の人数と看護職員との連絡体制を見学で確かめてみてください。
よくある質問
Q. 特養は未経験でも働けますか?
A. 介護職員には資格要件がないため、無資格・未経験から働ける求人が多くあります。移乗や食事介助などの身体介護は、入職後に現場で教わりながら覚えていけます。医療・福祉関係の資格がない方は採用後1年以内に認知症介護基礎研修を受講します。働きながら初任者研修や介護福祉士を目指すと、給与面でも差がつきます。
Q. 特養の夜勤は何人体制ですか?
A. ユニット型は2ユニットごとに1人以上が基準で、1人で20人前後を見守る計算です。従来型は入所者25人以下で1人以上、26〜60人で2人以上、61〜80人で3人以上、81〜100人で4人以上と人数に応じて決まります。これは最低ラインで、基準より多く配置する施設もあるため、応募前に実際の人数を確かめてください。
Q. 特養と老健はどちらが大変ですか?
A. 大変さの種類が違うと考えてください。特養は原則要介護3以上の方が中心で、移乗やおむつ交換などの身体介護と看取りへの対応が多くなります。老健は在宅復帰を目指す施設のため、入退所が多く、リハビリ職や看護職員との連携や記録の比重が大きくなります。体を使う負担と、調整や医療知識の負担のどちらが自分に合うかで選んでみてください。
参考資料・出典
- 令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果(厚生労働省、2025年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/index.html
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100039
- 厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準(平成12年厚生省告示第29号、厚生労働省法令等データベース)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa0263&dataType=0&pageNo=1
- 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成26年12月12日 厚生労働省老健局高齢者支援課長通知。広島県の入所指針ページに掲載)https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/64/nyuusyosisin.html
- 2025年介護施設夜勤実態調査結果~報告集~(日本医療労働組合連合会『医療労働』No.698、2026年3月)https://irouren.or.jp/research/2f4e72b66c0cced0b97d1d532a3929318192c380.pdf
- 令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.14)問1 認知症介護基礎研修の義務づけ(厚生労働省老健局、2025年4月18日)https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001478559.pdf
- 労働基準法 第37条(深夜の割増賃金)https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
※統計・制度の情報は2026年10月時点のものです。














