ケアマネージャー(介護支援専門員)を目指す介護職の方がまずぶつかるのは「自分は受験できるのか」という疑問です。対象となる資格は21種類、実務経験は5年以上かつ900日以上。計算方法も一筋縄ではいきません。さらに2027年には更新制の廃止が決まり、受験要件の緩和も検討が進んでいます。受験資格の確認方法から試験の全体像、制度改正の最新動向までまとめました。
ケアマネの受験資格——2つの条件
ケアマネ試験の正式名称は介護支援専門員実務研修受講試験。受けるには法定資格の保有と実務経験の2つを満たす必要があります。
対象となる法定資格21種
受験できるのは以下の21資格のいずれかを持っている方です。
医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、義肢装具士、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、歯科衛生士、栄養士(管理栄養士を含む)、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師。
受験者の大半は介護福祉士です。看護師、社会福祉士がそれに続きます。
2018年度の制度改正で、法定資格を持たず相談援助業務のみに従事していた方のルートは廃止されました。現在は上記21資格のいずれかが必須です。
実務経験5年以上・900日以上の数え方
資格を持っているだけでは受験できません。その資格に基づく業務に通算5年以上、かつ従事日数900日以上の実績が求められます。
通算なので、転職しても前の事業所での経験と合算できます。パートや派遣で働いていた期間もカウント対象です。
ただし従事日数の数え方には注意してください。年次有給休暇を取った日や欠勤した日は従事日数に含まれません。産休・育休の期間は在籍年数には算入されますが、実際に業務を行っていないため従事日数にはカウントされない。この違いが見落としやすいポイントです。
Aさん(介護福祉士・特養5年目)は「パート勤務の期間があったので900日に届くか心配でした。でも前職の通所介護での日数と合算できることが分かり、計算し直したら要件を満たしていた」と話しています。
日数に不安がある場合は、勤務先に実務経験証明書の発行を依頼してください。過去の事業所が閉鎖している場合は、都道府県の担当窓口に相談すれば対応方法を教えてもらえます。
受験資格がない場合の選択肢
法定21資格をまだ持っていない場合、最も多いのは介護福祉士を取得してからケアマネを目指すルートです。
介護福祉士の受験資格は実務経験3年(従業期間1,095日以上・従事日数540日以上)と実務者研修の修了。介護福祉士を取得した後、ケアマネの受験資格となる5年の実務経験を積みます。介護の仕事を始めてからケアマネ試験を受けられるまで最短で約8年。長い道のりですが、介護福祉士からケアマネへ進むのは介護業界で最も王道のキャリアパスです。
試験の全体像——科目・合格率・スケジュール
試験科目と合格基準
試験は全60問、五肢複択式のマークシートで120分。出題は2分野に分かれています。介護支援分野が25問、保健医療福祉サービス分野が35問です。
合格するには両分野で基準点を超えなければなりません。片方だけ到達しても不合格。基準は各分野の正答率約70%で、問題の難易度によって毎年補正されます。第28回試験(2025年度)では介護支援分野18点、保健医療福祉サービス分野25点が合格ラインでした。
介護支援分野は介護保険制度やケアマネジメントの知識が中心です。現場経験だけでは解きにくい制度系の問題が多く、ここが合否を分けます。
合格率は25%前後——介護福祉士とは難易度が違う
第28回試験(2025年度)の合格率は25.6%。前年の第27回は32.1%で、年度による振れ幅はあるものの、近年は20〜30%台で推移しています。
介護福祉士の合格率が70%前後であることを思えば、ケアマネは明確に難関です。受験者のほとんどが介護現場で働きながら勉強しており、準備時間を十分に確保できないまま本番を迎えるケースが後を絶ちません。
Bさん(30代・介護福祉士)は「介護福祉士は独学で一発合格したのでケアマネも同じ感覚で臨んだら落ちた。分野ごとに基準点があるのを甘く見ていた。介護支援分野が1点足りなかった」と振り返ります。
申し込みから合格までのスケジュール
試験は年1回、10月中旬の日曜日に実施されます。
受験申し込み期間は5月〜7月。実施主体が各都道府県のため日程が異なります。受験する都道府県の情報を4月頃には確認してください。申し込み期間は1〜2ヶ月と短く、気づいたときには締め切られていたという話も珍しくありません。
合格発表は11月下旬〜12月。合格後は実務研修(87時間以上)を受講し、修了して初めて介護支援専門員証が交付されます。研修は合格年度の翌年度に実施されることが多く、試験に受かってからケアマネとして働けるまでさらに数ヶ月〜半年ほどかかります。
受験手数料は都道府県によって異なりますが、概ね7,000〜14,000円です。
2027年の制度改正——何が変わるのか
ケアマネの資格制度が大きく変わります。ただし確定した改正と検討中の方向性が混在しているため、分けて整理します。
更新制の廃止(確定)
2026年6月、介護保険法の改正案が国会で可決・成立しました。施行は2027年4月の見込みです。
最大の変更は、ケアマネ資格の5年更新制がなくなること。これまでは5年ごとに更新研修を受ける必要があり、数日間の研修日程と受講費用が大きな負担でした。更新手続きを失念して資格が失効するケースもありました。
ただし更新制がなくなる=研修がなくなるではありません。代わりに「継続研修」の受講が法律上の義務として位置づけられます。未受講の場合は業務禁止の罰則が設けられる見込みです。事業所側にもケアマネの研修機会を確保する義務が課されます。
更新の手間は消える。研修は形を変えて残る。この2つはセットで理解してください。
受験要件の緩和(検討中)
厚労省は受験要件の見直しも検討しています。実務経験年数を現行の5年から3年に短縮する案、対象職種を21種から拡大する方向性が報じられています。
ただしこれはまだ確定していません。社会保障審議会・介護保険部会での協議が続いている段階です。「来年から3年で受けられる」と断定している情報があれば、それは正確ではありません。
今受けるべきか、制度改正を待つべきか
更新制の廃止は今すでに資格を持っている方にも適用されます。2027年の施行後は、既存の資格保有者も更新が不要になります。
迷うのは受験要件緩和を待つかどうか。結論から言えば、現時点で5年の実務経験を満たしている方は待つ理由がありません。要件が3年に短縮されたとしても、すでにクリアしている条件が不利になることはない。先に取得すれば、それだけ早くケアマネとして働き始められます。
Cさん(30代・介護福祉士7年目)は「制度改正を待とうか迷ったけれど、待っている間に1年ロスするだけだと気づいた。受けられる要件が揃った時点で受験して正解だった」と話しています。合格後の実務研修も含めると、早く動いた分だけ早くケアマネとしてのキャリアが始まります。
合格に向けた勉強の始め方
勉強期間と時間の目安
試験の6ヶ月前、4月頃に始めるのが理想です。1日1時間を6ヶ月続ければ約180時間。合格者の勉強時間は200〜300時間が目安とされています。
介護福祉士試験との最大の違いは、現場経験だけでは解けない問題が多い点です。介護保険制度の仕組み、要介護認定の流れ、ケアプラン作成の手順。こうした制度的な知識が正面から問われます。介護支援分野は「知っているか知らないか」で点差がつく科目です。
独学か講座か
合格率25%の試験ですが、独学で受かっている方もいます。基本の教材はテキスト1冊と過去問3年分。費用は5,000〜8,000円程度です。
体系的に学びたい方や、一人では計画を立てにくい方には通信講座やオンライン講座も選択肢になります。費用は3〜6万円程度。模擬試験や質問対応がセットになっている講座もあります。
Dさん(40代・看護師からケアマネ転向)は「保健医療分野は看護の知識でカバーできたが、介護保険制度は一から勉強し直した。過去問を3周してようやく合格圏内に入った。2周目から正答率が目に見えて上がるので、繰り返しが大事です」と語ります。
まとめ
ケアマネの受験資格は、法定21資格のいずれかを持ち、その資格に基づく業務に通算5年以上・従事日数900日以上従事していること。パートや派遣でも日数はカウントされ、複数事業所の合算もできます。
合格率は25%前後。介護福祉士より難関ですが、6ヶ月の計画的な対策で合格圏内に入れます。
2027年4月には更新制の廃止が確定しており、資格取得後の負担は軽くなります。受験要件の緩和は検討段階。今すでに要件を満たしている方は、待たずに動くのが得策です。
