申し送りが苦手。何を話せばいいか分からない。話しているうちに何が言いたいのか自分でも分からなくなる。介護職の方からよく聞く悩みです。申し送りは慣れとコツで上達します。伝えるべき内容、話し方のポイント、苦手な人の対処法をまとめました。
申し送りの目的
申し送りは「なんとなくやっている」業務ではありません。明確な目的があります。
なぜ申し送りが必要か
介護はシフト制の仕事です。早番、日勤、遅番、夜勤。勤務交代のたびに担当者が変わります。
前のシフトで起きた出来事や利用者の状態変化を、次のシフトのスタッフに正確に伝えなければ、ケアの継続性が保てません。申し送りは情報のバトンリレーです。
「昼食時にAさんがむせた」「Bさんが夜間に2回トイレに起きた」「Cさんのご家族から面会の連絡があった」。こうした情報が次のスタッフに伝わらなければ、適切な対応ができません。
申し送りと記録の違い
申し送りは口頭で伝える即時の情報共有です。記録は文書で残す公式な情報です。
記録には残すが申し送りでは省略してよい情報もあります。逆に、記録を書く前に口頭で緊急に伝えるべき情報もあります。
記録は「後から読んで分かる」ことが目的。申し送りは「今すぐ知ってもらう」ことが目的。この違いを意識すると、申し送りで何を話すべきかが整理できます。
記録の書き方は介護記録の書き方で解説しています。
申し送りで伝えるべき内容
すべてを伝える必要はありません。優先順位をつけてください。
必ず伝える情報
以下の情報は必ず申し送りで伝えてください。
利用者の体調変化。バイタルサインの異常、発熱、嘔吐、転倒、皮膚トラブルなど。「いつもと違う」状態は最優先で伝えます。
医師・看護師からの指示。「Aさんの血圧が高いので30分後に再測定」「Bさんの食事形態を変更」など、ケアに直結する指示は確実に引き継ぎます。
ご家族からの連絡・要望。「面会に来る」「持ち物を持ってくる」「ケアの内容について質問があった」。
事故・ヒヤリハット。発生した事故やヒヤリハットの内容と対応状況。
予定の変更。受診予定、入浴の順番変更、外出の予定など。
伝えなくてよい情報
いつもと同じ状態の利用者について「特に変わりありません」と全員分を報告する必要はありません。変化があった利用者だけを伝えればよい。
すでに記録に書いてあり、緊急性のない情報も申し送りでは省略できます。全部を話そうとすると時間がかかり、本当に重要な情報が埋もれます。
申し送りのコツ 5つ
伝わる申し送りにはパターンがあります。
結論から話す
申し送りで最もやりがちな失敗は、経緯から話し始めて結論がなかなか出てこないパターンです。
「Aさんなんですけど、朝食のときにちょっと元気がなくて、食事の量も少なめで、そのあとバイタルを測ったら……」ではなく、「Aさん、38.2℃の発熱があります。朝食は主食3割しか摂取できていません。看護師に報告済みで経過観察の指示です」。
結論(何が起きたか)→ 詳細(経緯)→ 対応(何をしたか)の順で話すと伝わりやすくなります。
事実と意見を分ける
「Aさんは体調が悪そうです」は意見。「Aさんの体温が38.2℃、食事摂取量は主食3割」は事実です。
まず事実を伝え、必要があれば「発語も少なく、普段より元気がないように見えます」と意見を添える。事実と意見を分けることで、聞く側が正確に状況を把握できます。
メモを用意してから話す
申し送りの前にメモを用意してください。伝えたい利用者の名前、内容、対応状況をキーワードで書き出しておくだけで十分です。
メモなしで話すと、伝え漏れが発生したり、話があちこちに飛んだりします。メモは自分のための台本です。
固有名詞と数字を使う
「あの方」「さっき」「けっこう」ではなく「Aさん」「14時」「38.2℃」。固有名詞と数字を使うと情報の精度が上がります。
特に時刻と数値は曖昧にしないでください。「昼ごろ」ではなく「12:15」。「少し高め」ではなく「37.8℃」。
短く区切る
1人の利用者について一気に長く話すと、聞く側が情報を処理しきれません。
1人の情報を30秒〜1分以内にまとめる意識で話してください。長くなりそうな場合は「詳細は記録に書きましたので確認をお願いします」と記録に誘導する方法もあります。
申し送りが苦手な人の対処法
苦手意識がある方でも、工夫次第で上達します。
テンプレートを使う
申し送りの定型フレーズを持っておくと、毎回ゼロから考えずに済みます。
「○○さんについてです。(結論)。経緯は(詳細)。対応として(何をしたか)。引き継ぎ事項は(次のシフトへのお願い)」。
この型に沿って話すだけで、抜け漏れなく簡潔に伝えられます。
先輩の申し送りを観察する
申し送りが上手な先輩のやり方を観察してください。何をどの順番で話しているか、どのくらいの長さか、どんなメモを作っているか。
真似をするところから始めて、徐々に自分のスタイルを確立していけば大丈夫です。
申し送りのNG例
避けるべき申し送りのパターンです。
「特に変わりないです」だけで終わる。本当に全員変化がないのかを確認した上で言っているか。見落としの可能性はないか。
ダラダラと長い。「それで、それから、あと……」と際限なく続く申し送りは、重要な情報が埋もれます。
感情が入りすぎる。「Aさんがまた怒って大変だった」ではなく、「Aさんが15時に入浴を拒否された。理由を聞いたところ『寒いから嫌だ』とのこと。清拭で対応した」。事実を伝えてください。
曖昧な表現が多い。「なんか変な感じ」「ちょっと心配」ではなく、具体的に何が変なのか、何が心配なのかを言語化して伝えてください。
まとめ
申し送りのコツは、結論から話す、事実と意見を分ける、メモを用意する、固有名詞と数字を使う、短く区切る。この5つです。
完璧な申し送りを目指す必要はありません。「次のシフトの人が困らない情報を渡す」。これだけを意識すれば十分です。
