介護報酬が改定されると給料が変わるらしい。でも介護報酬って何なのか。改定で上がるのは報酬であって、自分の手取りではないのでは?そんな疑問を持つ方は多いはずです。介護報酬の仕組みから直近の改定内容、改定が介護職の給料にどう影響するかまで、現場で働く方に向けてまとめました。
そもそも介護報酬とは
介護報酬と聞くと複雑に思えますが、仕組みそのものはシンプルです。
介護サービスの「値段」
介護報酬は介護サービスの公定価格です。どのサービスをどのくらいの時間提供したら、いくら受け取れるかが国で決められています。
利用者が払うのは1〜3割。残りは介護保険から支払われます。金額は「単位数」で計算され、1単位あたり約10〜11.4円。地域によって異なります。
たとえば訪問介護の身体介護30分未満は250単位。1単位10円の地域なら2,500円。利用者は1割負担の場合250円を払い、残り2,250円が保険から施設に入ります。
施設の収入になる仕組み
この介護報酬が施設の売上の大部分です。利用者の自己負担分と介護保険からの給付分を合わせた金額が施設のメイン収入になります。
施設はこの収入から人件費を払います。介護報酬が上がれば施設の収入が増え、職員の給料に回す原資が増える。「介護報酬改定で給料が上がる」と言われるのはこの仕組みです。
介護報酬改定とは——3年に1度のルール変更
介護報酬の金額は固定ではありません。定期的に見直されます。
改定の周期とプロセス
3年に1度、定期改定が行われます。直近は2024年度、次は2027年度、その次は2030年度です。
社会保障審議会での議論、現場の実態調査、関係団体からのヒアリングを経て、厚生労働大臣が改定率と内容を決めます。改定率はプラスのこともマイナスのこともあります。引き上げなら施設の収入が増え、引き下げなら減る。介護職の給料に直結する話です。
臨時改定もある
3年ごとの定期改定とは別に、臨時の改定が入ることがあります。2026年6月に実施された+2.03%がこれにあたります。
物価高騰や人材不足の深刻化など、定期改定を待てない緊急性があるときに行われます。
2024年度改定の主なポイント
直近の定期改定である2024年度改定は、介護職の給料に関わる部分が大きい改定でした。
改定率+1.59%
2024年4月に施行(一部6月)。改定率+1.59%のうち、+0.98%が処遇改善に充てる分です。介護職員の給料を上げることを目的に設計されています。
処遇改善加算の一本化
この改定の目玉です。それまで3つに分かれていた加算が「介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。
統合前は処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算の3つが並立していました。名前が似ていて分かりにくく、施設側の事務負担も大きかった。一本化で仕組みがシンプルになっています。
新加算はⅠ〜Ⅳの4区分。Ⅰが最も加算率が高い。施設がどの区分を取得しているかで、職員に分配される金額が変わります。
その他の変更
訪問介護の基本報酬が引き下げられました。一方で処遇改善加算は拡充されており、加算を含めた実質的な影響は施設の加算取得状況次第です。
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)も見直され、データ提出の要件が整理されました。
2026年の臨時改定——+2.03%の背景
2024年改定からわずか2年で臨時改定が入りました。異例のスピードです。
なぜ臨時改定が必要だったか
2024年改定後も物価上昇が続き、介護事業所の経営は厳しさを増しました。光熱費、食材費、消耗品の値上がりが収益を圧迫し、人件費に回す余裕がなくなった施設が出ています。
同時に他産業の賃金上昇が進み、介護職との格差が広がりました。このまま放置すれば人材流出が加速する。この危機感が臨時改定につながっています。
改定の内容
2026年6月から介護報酬が2.03%引き上げられています。基本報酬と加算の両面での引き上げです。
臨時改定に先立つ2025年12月〜2026年5月には、介護職員1人あたり最大月1.9万円の処遇改善支援も実施されました。臨時改定が施行されるまでのつなぎ措置です。
介護報酬改定が給料に影響する仕組み
報酬が上がれば自動的に給料が上がるかというと、そう単純ではありません。
報酬アップ=給料アップとは限らない
介護報酬のアップ分は施設の収入増です。増えた分を人件費に回すか、設備投資に使うか、借入金の返済に充てるかは施設の経営判断によります。
ただし処遇改善加算は別です。この加算は介護職員の賃金改善に使うことが義務づけられています。他の用途には使えません。加算を取得している施設は、その分を必ず給料に反映しなければなりません。
加算が給料に反映される3つのパターン
最も多いのは、毎月の手当として支給するパターンです。給与明細に「処遇改善手当」と記載されます。
賞与に上乗せする施設もあります。月々の手当にはなりませんが、ボーナスで反映されます。
基本給に組み込む施設は少数派ですが、職員にとっては最も安定的です。基本給が上がると退職金や残業手当の計算にも影響するためです。自分の施設がどのパターンで反映しているか、給与明細で確認してみてください。
今後の見通し——2027年度改定に向けて
次の定期改定は2027年度。審議はすでに始まっています。
2027年度改正の論点
社会保障審議会介護保険部会で議論が進んでいます。処遇改善の継続・強化は引き続き柱の一つ。介護人材確保策の拡充、外国人介護人材の受け入れ体制、ICT活用による業務効率化も論点に上がっています。
改定率がどの程度になるかは2027年初頭に決まる見込みです。
現場の介護職員としてできること
制度の改定そのものは待つしかありません。ただ、改定の恩恵を最大限受けるためにできることはあります。
処遇改善加算の区分が高い施設で働くことです。加算を取得していない施設や区分が低い施設では、報酬が上がっても給料への反映が薄い。
資格取得も有効です。処遇改善加算には「経験・技能のある介護職員」への重点配分の仕組みがあり、介護福祉士で経験10年以上の職員は多く配分される傾向があります。
制度の動きを把握しておくと、転職の判断材料にもなります。改定のタイミングは施設の経営状況が変わるタイミングでもあります。
まとめ
介護報酬は介護サービスの公定価格で、3年に1度改定されます。2024年改定で処遇改善加算が一本化され、2026年には臨時改定で+2.03%が実施されました。
報酬が上がっても給料への反映は施設次第。ただし処遇改善加算は給料への分配が義務です。加算の区分が高い施設で働くことが、制度の恩恵を最大限受ける方法です。
