介護保険の仕組みをわかりやすく解説|財源・サービス・利用の流れ

介護の仕事をしていると「介護保険」という言葉を毎日耳にします。でも仕組みの全体像を把握できている介護職員は意外と少ない。利用者やご家族に「介護保険ってどういう仕組みなの?」と聞かれたとき、説明できるでしょうか。お金の流れ、サービスの種類、利用の手順を、介護職の視点でまとめました。

介護保険とは——制度の全体像

介護保険は2000年にスタートした社会保険制度です。介護が必要な高齢者を社会全体で支える仕組みとして作られました。

介護保険の目的と対象者

40歳以上の国民が保険料を納め、介護が必要になったときにサービスを受けられる制度です。

被保険者は2つに分かれます。65歳以上が第1号被保険者で、要介護認定を受ければ介護サービスを利用できます。40〜64歳が第2号被保険者で、こちらは特定疾病(初老期認知症、脳血管疾患など16疾病)が原因で介護が必要になった場合に利用できます。

お金の流れ——財源の構成

介護保険の財源は保険料50%と公費(税金)50%で成り立っています。

公費の内訳は国が25%、都道府県が12.5%、市区町村が12.5%。保険料50%は第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40〜64歳)の保険料で構成されています。

このお金は介護報酬として介護サービスを提供する施設や事業所に支払われます。そこから介護職員の給料が出ています。つまり介護職の給料の原資は介護保険です。介護報酬の改定で報酬単価が変われば、施設の経営にも給料にも影響が出る。この仕組みを知っておくと、介護報酬改定のニュースの意味が分かるようになります。

要介護認定の仕組み

介護保険のサービスを利用するには、まず要介護認定を受ける必要があります。

申請から認定までの流れ

利用者またはご家族が市区町村の窓口に申請します。地域包括支援センターでも受け付けています。

申請後、認定調査員が利用者の自宅を訪問し、心身の状態を調査します。並行して市区町村から主治医に意見書の作成が依頼されます。

訪問調査の結果はコンピューターで一次判定されます。その後、医師や介護の専門家で構成される介護認定審査会で二次判定が行われ、最終的な介護度が決まります。

申請から結果通知まで約30日が目安です。

要支援と要介護の違い

認定結果は「非該当」「要支援1〜2」「要介護1〜5」のいずれかです。

要支援は日常生活の一部に支援が必要な状態で、主に介護予防サービスを利用します。要介護は日常生活に介護が必要な状態で、介護サービスを利用します。

介護度が上がるほど、月に利用できるサービスの上限額(区分支給限度額)が増えます。要介護5は要介護1の2倍以上のサービスを利用できます。

介護保険サービスの種類

介護保険で利用できるサービスは大きく3つに分かれます。介護職として働く施設やサービスが、制度上どの位置にあるかを把握しておいてください。

居宅サービス

自宅で生活しながら利用するサービスです。

訪問介護はヘルパーが自宅を訪問して身体介護や生活援助を行います。訪問看護は看護師が自宅を訪問。デイサービスは施設に通って日帰りのケアを受けます。ショートステイは短期間施設に宿泊するサービスです。

在宅生活を支えるサービスが中心で、介護保険サービスの利用者数としては最も多い分野です。

施設サービス

施設に入所してケアを受けるサービスです。対象は要介護1以上(特養は原則要介護3以上)。

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院の3種類があります。介護職の求人が最も多いのもこの施設サービスの領域です。

地域密着型サービス

住み慣れた地域で利用するサービスです。市区町村が指定し、原則としてその市区町村の住民が利用します。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)、小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などが含まれます。

利用者の自己負担

介護保険サービスの費用は全額が保険から出るわけではありません。利用者にも自己負担があります。

原則1割負担

介護サービスにかかった費用の1割が利用者の自己負担です。残りの9割は介護保険から事業所に支払われます。

一定以上の所得がある利用者は2割負担、現役並みの所得がある場合は3割負担になります。

区分支給限度額

要介護度ごとに、月に利用できるサービスの上限額が決まっています。

介護度区分支給限度額(月額)
要支援1約50,320円
要支援2約105,310円
要介護1約167,650円
要介護2約197,050円
要介護3約270,480円
要介護4約309,380円
要介護5約362,170円

限度額を超えた分は全額自己負担になります。ケアマネジャーはこの限度額の範囲内でケアプランを組みます。

介護職が知っておくべきポイント

制度の全体像を理解した上で、介護職として特に押さえておきたいポイントが2つあります。

介護報酬の仕組み

施設や事業所の収入源は介護報酬です。利用者が受けたサービスの対価として、介護保険から支払われます。

介護報酬の単価は3年に1度の介護報酬改定で見直されます。報酬が上がれば施設の収入が増え、職員の処遇改善につながる。報酬が下がれば経営が厳しくなる。介護報酬改定は介護職の給料に直結するテーマです。

介護報酬改定の詳細は介護報酬改定わかりやすくにまとめています。

処遇改善加算の位置づけ

介護報酬の中に、介護職員の賃金を改善するための加算があります。処遇改善加算です。

2024年度の改定で3つの処遇改善加算が一本化され「介護職員等処遇改善加算」になりました。加算分は介護職員の賃金改善に充てることが要件であり、施設の利益にはできません。

処遇改善加算の仕組みは処遇改善加算で解説しています。

まとめ

介護保険は保険料50%と公費50%で運営される社会保険制度。利用者は要介護認定を受けてサービスを利用し、費用の1割(所得により2〜3割)を自己負担します。

介護職の給料の原資は介護報酬です。介護報酬改定と処遇改善加算が、施設の経営と介護職の給料を左右する。この全体像を押さえておくと、制度改正のニュースが自分ごととして読めるようになります。