介護の現場には独自の専門用語や略語が数多くあります。入職したての頃は先輩の話す言葉が分からず、戸惑うことも多い。ここでは介護現場でよく使われる用語をカテゴリ別に整理しました。分からない言葉が出てきたときに辞書代わりに使ってください。
利用者の状態に関する用語
利用者の心身の状態を表す用語です。記録やカンファレンスで頻繁に使われます。
ADL・IADL
ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)
食事、排泄、入浴、着替え、移動など、日常生活を送るために必要な基本的な動作のことです。介護現場では「ADLが自立している」「ADLの低下が見られる」のように使います。
IADL(Instrumental Activities of Daily Living:手段的日常生活動作)
ADLよりも複雑な生活行為を指します。買い物、料理、洗濯、掃除、金銭管理、服薬管理、電話の利用、交通機関の利用など。IADLの低下はADLの低下より先に現れることが多く、早期の変化に気づくための指標になります。
QOL(Quality of Life:生活の質)
その人がどれだけ自分らしい生活を送れているかを表す概念です。介護の目的は単に身体的なケアを行うだけでなく、利用者のQOLを維持・向上させることにあります。
要介護度・要支援
要介護認定
介護保険サービスを利用するために、市区町村が利用者の介護の必要度を判定する制度です。結果は「非該当」「要支援1〜2」「要介護1〜5」の8段階。数字が大きいほど介護の必要度が高い。
区分支給限度額
要介護度ごとに決められた、1か月に利用できる介護サービスの上限額です。限度額を超えた分は全額自己負担。介護保険の仕組みの詳細は[内部リンク: 介護保険の仕組み]で解説しています。
自立支援
利用者ができることは自分でしてもらい、できない部分だけを支援する考え方です。「何でもやってあげる」介護ではなく、残存機能を活かす介護が求められています。
認知症関連の用語
BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:行動・心理症状)
認知症に伴って現れる行動面・心理面の症状です。徘徊、興奮、暴言、不眠、妄想、抑うつなど。以前は「周辺症状」と呼ばれていました。
中核症状
認知症の原因となる脳の障害によって直接引き起こされる症状です。記憶障害、見当識障害、判断力の低下、実行機能障害、失語、失認、失行など。中核症状とBPSDを区別して理解することが認知症ケアの基本です。
見当識障害
「今がいつか(時間)」「ここがどこか(場所)」「この人は誰か(人物)」が分からなくなる症状です。時間→場所→人物の順で障害が進む傾向があります。
介護サービスに関する用語
介護保険で利用できるサービスの種類と名称です。
施設系サービスの用語
特養(特別養護老人ホーム)
原則要介護3以上の方が入所する施設。終身利用が可能で、費用は比較的安い。正式名称は「介護老人福祉施設」。
老健(介護老人保健施設)
在宅復帰を目指す中間施設。リハビリが中心で、入所期間は原則3〜6か月。医師が常勤しています。
介護医療院
長期的な医療と介護を必要とする方が入所する施設。2018年に「介護療養型医療施設」から転換する形で創設されました。
有料老人ホーム
民間企業が運営する介護施設。介護付き、住宅型、健康型の3種類。料金体系や入居条件は施設ごとに大きく異なります。
施設の違いの詳細は[内部リンク: 特養・老健・有料の違い]で比較しています。
在宅系サービスの用語
訪問介護(ホームヘルプ)
ヘルパーが自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行うサービスです。
訪問看護
看護師が自宅を訪問し、医療的ケアや健康管理を行うサービスです。
通所介護(デイサービス)
日帰りで施設に通い、入浴・食事・レクリエーションなどのサービスを受けます。
通所リハビリテーション(デイケア)
医師の指示のもと、リハビリを目的として施設に通うサービス。デイサービスとの違いはリハビリに重点がある点です。
短期入所生活介護(ショートステイ)
一時的に施設に泊まるサービス。ご家族の介護負担の軽減や、利用者の気分転換が目的です。
地域密着型サービスの用語
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
認知症の方が少人数(5〜9人のユニット)で共同生活をする施設です。家庭的な環境でケアを行います。
小規模多機能型居宅介護(小多機)
通い・泊まり・訪問の3つのサービスを1つの事業所で提供する仕組みです。利用者の状態に応じて柔軟にサービスを組み合わせます。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
24時間対応で定期的な巡回訪問と、緊急時の随時対応を行うサービス。在宅での重度者対応を支えるサービスです。
介護業務に関する用語
日々の業務で使う用語です。
身体介護の用語
移乗(いじょう)
ベッドから車いす、車いすから便座など、場所を移る動作を介助すること。介護の基本技術の一つです。
体位変換
自分で寝返りが打てない利用者の体の向きを変えること。褥瘡(じょくそう:床ずれ)を防ぐために、2時間ごとの体位変換が基本とされています。
褥瘡(じょくそう)
同じ姿勢で長時間過ごすことで、皮膚が圧迫されてできる傷(床ずれ)。仙骨部、かかと、肩甲骨周辺にできやすい。
口腔ケア
歯磨きや義歯の手入れ、口の中の清掃を行うこと。誤嚥性肺炎の予防に重要なケアです。
更衣介助
衣服の着脱を手伝うこと。患側(麻痺のある側)から着て、健側(麻痺のない側)から脱ぐのが基本原則(脱健着患)。
排泄介助
トイレでの排泄やオムツ交換の介助です。利用者の自尊心に配慮しながら行う必要があります。
バイタルサイン関連
バイタルサイン(VS)
生命兆候。体温、血圧、脈拍、呼吸の4つを指します。SpO2(酸素飽和度)を加えて5項目とする施設も多い。
SpO2(エスピーオーツー)
パルスオキシメーターで測定する経皮的動脈血酸素飽和度。正常値は96〜99%。95%以下で注意が必要です。
血圧
収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)。高齢者の正常値の目安は130/85mmHg未満ですが、個人差が大きいため日頃の値を把握しておくことが重要です。
記録・申し送りの用語
申し送り
勤務交代時に、前のシフトの出来事や利用者の状態を次のシフトのスタッフに伝えること。
ケース記録
利用者ごとの日々の記録。食事量、バイタル、活動内容、特記事項などを記載します。記録の書き方は[内部リンク: 介護記録の書き方]で解説しています。
ヒヤリハット
事故には至らなかったが、ヒヤッとした出来事の報告。事故を未然に防ぐために、ヒヤリハットの段階で報告・共有する仕組みが施設に求められています。
インシデント・アクシデント
インシデントはヒヤリハットとほぼ同義で使われることが多い。アクシデントは実際に事故が発生したケースを指します。
制度・保険に関する用語
介護保険制度や報酬に関する用語です。
介護保険制度の用語
ケアプラン(介護サービス計画書)
利用者の心身の状態や希望に基づいて、どのような介護サービスをどのくらい利用するかを記載した計画書。ケアマネジャーが作成します。
ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアプランの作成と、サービス事業者との連絡調整を行う専門職。利用者と介護サービスをつなぐ役割です。ケアマネの受験資格は[内部リンク: ケアマネの受験資格]で解説しています。
地域包括支援センター
高齢者の生活を総合的に支える地域の相談窓口。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーが配置されています。介護予防、権利擁護、総合相談などの業務を担います。
サービス担当者会議
ケアプランの作成や見直しの際に、利用者・家族、ケアマネジャー、各サービス事業者が集まって行う会議です。
報酬・加算の用語
介護報酬
介護サービスを提供した事業者に支払われる対価。単位で表され、1単位はおおむね10円(地域により異なる)。3年ごとに改定されます。
処遇改善加算
介護職員の賃金を改善するための加算。事業所が要件を満たして届出を行い、加算分は職員の賃金改善に充てることが義務づけられています。詳細は[内部リンク: 処遇改善加算]を参照してください。
加算・減算
基本報酬に対して上乗せされるのが加算、差し引かれるのが減算。夜間対応体制加算、認知症ケア加算、人員基準欠如減算など多数あります。
現場でよく使われる略語一覧
介護現場で飛び交う略語をまとめます。
| 略語 | 正式名称 | 意味 |
|---|---|---|
| ADL | Activities of Daily Living | 日常生活動作 |
| IADL | Instrumental ADL | 手段的日常生活動作 |
| QOL | Quality of Life | 生活の質 |
| BPSD | Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia | 認知症の行動・心理症状 |
| VS | Vital Signs | バイタルサイン |
| SpO2 | Percutaneous Oxygen Saturation | 経皮的動脈血酸素飽和度 |
| BP | Blood Pressure | 血圧 |
| BT | Body Temperature | 体温 |
| HR/PR | Heart Rate / Pulse Rate | 心拍数/脈拍数 |
| PT | Physical Therapist | 理学療法士 |
| OT | Occupational Therapist | 作業療法士 |
| ST | Speech-Language-Hearing Therapist | 言語聴覚士 |
| NS | Nurse | 看護師 |
| CM | Care Manager | ケアマネジャー |
| SW | Social Worker | 社会福祉士/ソーシャルワーカー |
略語は施設によって使い方が異なる場合があります。分からない略語が出てきたら、遠慮なく先輩に確認してください。
まとめ
介護の専門用語は最初から全部覚える必要はありません。現場で出会うたびに確認し、少しずつ身につけていけば大丈夫です。この記事をブックマークしておいて、分からない言葉が出てきたときに確認してください。
