介護職のSNS投稿はどこからアウト?利用者の写真・愚痴・退職後と守秘義務

SNSに投稿する前に守秘義務を考える介護職員
公開日 執筆 介護ワーカーズナビ編集部

仕事のことをSNSで発信したいけれど、顔を写さなければ大丈夫なのか、施設名を出さない愚痴ならよいのか、迷う方は多いでしょう。実際には、介護職の守秘義務には3つの根拠があり、資格がなくても、退職した後でも関わってきます。この記事では、投稿の種類ごとの線引き、根拠の条文、違反したときの処分と罰則、報道事例、公式SNSでの同意、相談先をまとめました。SNSで発信している介護職の方や、公式SNS・行事写真を任された方に向けた内容です。

この記事でわかること

  • 介護職のSNS投稿で問題になりやすいパターン
  • 守秘義務の3つの根拠と、無資格の職員や退職後にも関わる理由
  • 違反したときの懲戒処分・損害賠償・刑事罰の考え方
  • 公式SNSや行事写真での同意の扱いと、迷ったときの相談先

介護職のSNS投稿、どこからアウトか

問題になるのは、利用者や家族の情報が外に出る投稿と、職場の信用を傷つける投稿です。下の表は、よくある投稿と主に関わるルールを整理したものです。社会福祉士及び介護福祉士法46条は、以下では46条と書きます。細かな基準は事業所ごとに違うため、最終的には勤め先の就業規則やSNSの規程で確認してください。

投稿の例 主に関わるルール 考え方
利用者の顔が写った写真・動画 社会福祉士及び介護福祉士法46条(有資格者)、運営基準・就業規則、個人情報保護法 識別できる写真は個人情報。同意なく公開すれば守秘義務違反になりうる
後ろ姿・手元・声・名前の一部 同上 施設名やアカウントの情報と合わせると特定されうる
施設名や地域が分かる愚痴 就業規則。内容によって46条 利用者・家族・同僚の言動を書けば秘密の漏えいになりうる
勤務中の撮影・ライブ配信 就業規則(職務専念、撮影の制限) 利用者が映らなくても勤務中であること自体が問題
職員同士の写真 就業規則、写っている人の了解 背景に利用者や掲示物、記録の画面が映り込みやすい
退職後の暴露や思い出話 46条、退職時の誓約 退職しても守秘義務はなくならない

利用者の写真は後ろ姿や声でも特定される

個人情報保護委員会と厚生労働省のQ&A(事例集)は、写真も個人を識別できるものであれば個人情報に当たるとしています。顔を隠せば安全とは言い切れません。

後ろ姿や居室の様子、呼びかける声に含まれる名前でも、施設名や過去の投稿と合わせれば、知人には誰のことか分かることがあります。2026年7月に報道された事例でも、問題とされたのは利用者の後ろ姿の映り込みと、名前を呼ぶ声でした。

施設名が分かる愚痴や職場の内部の話

愚痴そのものが禁止されているわけではありません。ただ、利用者や家族の言動、事故やクレームの経緯を書けば、仕事で知った秘密を外に出すことになります。

東京都の労働相談資料(TOKYOはたらくネット)は、名前や勤め先が分かる形で発信した情報は、仕事と関係のない内容でも勤め先の信用を害する行為になることがあるとしています。SNSでの言葉選びも、介護の接遇マナーの延長として考えると判断しやすくなります。

勤務中の撮影と職員同士の写真

勤務中の撮影や配信は、利用者が映らなくても、勤務時間中は業務に専念するという義務(職務専念義務)に関わります。東京都の資料も、施設内での撮影や情報発信を事業所があらかじめ制限しておくこと自体は、基本的に許されるとしています。

職員同士の写真は、同僚の了解に加えて背景の確認が欠かせません。ホールの利用者、居室の名札、掲示物、記録の画面、制服のロゴは特定の手がかりになります。

守秘義務の根拠は3つある

介護職の守秘義務は、1つの法律だけで決まっているわけではありません。介護福祉士本人に課される資格法の義務、運営基準と就業規則による義務、事業所が負う個人情報保護法の義務の3つが重なり、資格の有無によって直接当てはまるものが変わります。

介護福祉士は社会福祉士及び介護福祉士法46条

社会福祉士及び介護福祉士法46条は、介護福祉士は正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならないと定めています。

45条は介護福祉士の信用を傷つけるような行為も禁じています(信用失墜行為の禁止)。利用者を揶揄する投稿は、秘密の漏えいに当たらなくても、この条文に触れるおそれがあります。

資格がなくても運営基準と就業規則で守秘義務がある

無資格の職員に46条は当てはまりませんが、介護保険サービスの運営基準が従業者全員に秘密保持を求めています。訪問介護では、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準33条が、従業者は正当な理由なく業務上知り得た利用者や家族の秘密を漏らしてはならないと定めています。

通所介護は同じ基準の105条でこの規定を準用し、特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)の基準にも30条に同じ規定があります。用語の意味は介護用語一覧で確認できます。

事業所は個人情報保護法で従業者を監督する

個人情報保護法の義務を直接負うのは事業所です。同法27条は本人の同意を得ない個人データの第三者提供を原則として禁じ、24条は従業者への必要かつ適切な監督を求めています。

個人情報保護委員会と厚生労働省のガイダンス(令和8年4月一部改正)は、雇用契約や就業規則で離職後も含めた守秘義務を課すことや、従業者への教育研修を事業所に求めています。記録の扱いは介護記録の書き方もあわせてご覧ください。

退職後も守秘義務は続く

職場を辞めたからといって、何を書いてもよいわけではありません。資格法にも運営基準にも、退職後や資格を失った後の扱いが明記されており、転職先での会話やSNSでの思い出話も範囲に入り、何年たっても同じです。

46条の「介護福祉士でなくなった後においても」

46条の後段には、介護福祉士でなくなった後においても同様とする、という一文があります。資格を失った場合や介護の仕事を離れた場合でも、在職中に知った秘密を漏らしてはならない義務は残ります。

この規定に期限は書かれていません。退職からの年数で区切られるものではないと考えておく必要があります。

運営基準の「従業者であった者」と誓約書

訪問介護の基準33条2項は、従業者であった者が秘密を漏らさないよう必要な措置を講じることを事業者に義務づけています。介護老人福祉施設の基準30条2項も同じ趣旨です。

この措置として、退職時に秘密を守る旨の誓約書を交わす事業所があります。転職先で前職の利用者の話をするのも同じです。退職時の手続き全体は介護職の円満退職ガイドで整理しています。

違反したらどうなるか

SNS投稿が問題になった場合、懲戒処分、損害賠償の請求、介護福祉士であれば刑事罰と登録の取消しの可能性があります。どれが当てはまるかは投稿の内容や影響で変わり、懲戒と損害賠償には社内規定や実際の損害といった前提があります。

就業規則による懲戒処分

東京都の労働相談資料によると、勤務時間外の私的な行動でも、企業の名誉や顧客からの信頼を失わせると客観的に評価できる場合は、懲戒処分の対象になることがあります。企業の秘密や顧客の情報を漏らすことは、一般的には契約上の義務に違反する違法な行為になるとも説明しています。ただし、懲戒処分は社内規定に従い、相当な範囲と程度で行う必要があるとも書かれています。

損害賠償を請求される可能性

同じ資料は、私的な行動が実際に損害を与えるものであれば損害賠償請求が認められることがあり、その額は客観的にみて妥当な範囲に限られるとしています。

投稿の内容によっては、写っている人の肖像権や、刑法230条の名誉毀損が問題になることもあります。個別の事情は弁護士などの専門家に相談してください。

介護福祉士の刑事罰と登録の取消し

介護福祉士が46条に違反した場合、50条1項により1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金の対象になります。2025年6月1日施行の刑法改正で、以前の「懲役」は「拘禁刑」に改められました。50条2項により、告訴がなければ起訴できない親告罪です。

刑事罰とは別に、厚生労働大臣は45条や46条に違反した介護福祉士の登録を取り消すか、期間を定めて名称の使用停止を命ずることができます(32条2項を42条2項で準用)。停止期間中に介護福祉士の名称を使うと、53条により30万円以下の罰金の対象です。

2026年7月の報道事例で何が起きたか

2026年7月に、介護施設の職員による動画配信が問題となり、運営会社が謝罪した事例がJ-CASTニュース(7月28日)で報道されました。公的機関の資料ではないため、報道された範囲の経緯と対応だけを書き、施設名や個人名には触れません。

報道された経緯

報道によると、職員は夜間の勤務中に施設内から約20分間のライブ配信を行い、その中に利用者2人の名前を呼ぶ音声が含まれていたとされています。利用者の姿は映っていなかったと報じられています。

休憩時間中に施設内で撮影した動画も以前から投稿しており、一部に利用者の後ろ姿が映り込んでいたとされています。運営会社はライブ配信を、職務専念義務に著しく反する行為だと指摘したと報じられました。

運営会社が取った対応

運営会社は社長名の謝罪文を公式サイトに掲載し、続報で調査結果を公表したと報じられています。報道された主な対応は次のとおりです。

  • 利用者の家族への個別の報告と謝罪
  • 投稿動画の全削除とアカウントの非公開化
  • 管轄の行政機関などへの報告と、就業規則に基づく処分の方針
  • SNSの適切な利用などに関する再教育

原因として教育の不足と夜間の管理監督の不備を挙げたとも報じられています。

公式SNSや行事写真の担当を任されたら

施設の公式SNSや広報誌、行事写真の撮影係を任されることもあるでしょう。事業所として利用者の写真を扱うため、同意の取り方と範囲を事業所の決まりに沿って進めることが前提です。個人の投稿とは違い、保存や承認の手順まで決める必要があります。

個人が識別できる写真は同意が原則

Q&A(事例集)のQ4-15は、ホームページや機関誌に行事などの利用者の写真を載せる場合について、個人を識別できる写真は個人情報に当たり、第三者の閲覧に供するときは原則として本人の同意が必要だとしています。施設内への展示も同様に扱われています。

同意は、どの媒体にどの写真を載せるかという範囲とセットです。広報誌への掲載に同意した方が、SNSへの掲載にも同意しているとは限りません。

同意の取消しと掲載前の確認

ガイダンスは、第三者提供に同意した本人から範囲の一部について同意を取り消す申出があった場合、以後は同意のあった範囲に限って取り扱うとしています。担当になったら、事業所の規程で次の点を確認しておくと進めやすくなります。

  • 誰の同意を、どの書式で取るか
  • 撮影に使う端末と、写真データの保存場所・削除の時期
  • 掲載前に誰が確認・承認するか
  • 同意の取消しや誤投稿があったときの報告先

誤投稿に気づいたら、削除だけで済ませず上司に報告しましょう。経緯を時系列で残す考え方は介護の事故報告書の書き方とも共通しています。

迷ったときの相談先

投稿してよいか迷ったときは、投稿しないのがいちばん確実です。ルールを確かめたいときや、職場への不満の持っていき場所に困ったときの相談先を知っておくと、SNSに頼らずに済みます。相談先は職場の中と外の両方にあります。

職場の中と個人情報保護委員会

まずは勤め先の就業規則やSNSの利用ルールを確認し、分からない点は上司や個人情報の担当者に尋ねましょう。法律の解釈などは、個人情報保護委員会の個人情報保護法相談ダイヤル(03-6457-9849)に電話で相談できます。受付は9時30分から17時30分で、土日祝日と年末年始は休みです(2026年11月時点)。

職場への不満や告発をSNSに書く前に

東京都の資料は、法律違反を防ぐ目的で監督する行政機関に通報すること(公益通報)や、自分の利益を守る目的で行政機関・労働組合・弁護士などに必要な範囲で相談することは、違法とはいえないとしています。

利用者や家族からの暴言などは、介護の利用者・家族からのハラスメントの対処法で相談先をまとめています。職場の問題を外に伝えたいときは、SNSより先にこうした窓口を検討してください。

まとめ

  • 顔を隠しても、後ろ姿や声、名前、施設名との組み合わせで利用者が特定されることがある
  • 守秘義務の根拠は3つあり、無資格の職員にも当てはまる
  • 46条と運営基準は退職後にも及び、期限はない
  • 介護福祉士が46条に違反すると、1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金(親告罪)や登録の取消しの対象になる
  • 迷ったら投稿せず、上司や個人情報保護委員会の相談ダイヤルに確認する

よくある質問

Q. 鍵アカウントや親しい友人だけへの投稿なら問題ありませんか?

A. 46条は「漏らしてはならない」と定めており、公開範囲で区別していません。東京都の労働相談資料も、SNSへの掲載は関係者以外に情報が流出する可能性が高いと指摘しています。利用者や職場の情報は書かないほうが安全です。

Q. 利用者本人が「載せていい」と言えば、個人のアカウントに投稿してよいですか?

A. 就業規則やSNS規程で、個人による撮影や投稿そのものが禁止されていることがあります。本人の了解があっても、まず勤め先の規程を確認してください。利用者の写真を外に出す場合は、事業所として同意の範囲を決めて確認するのが基本です。

Q. 無資格のパートや派遣でも守秘義務はありますか?

A. あります。運営基準は資格の有無にかかわらず従業者に秘密保持を求めており、就業規則や誓約書の対象にもなります。ガイダンスも派遣労働者への教育研修に配慮するよう事業所に求めています。

Q. 退職して何年もたてば、前職の話を書いてもよいですか?

A. 46条は介護福祉士でなくなった後も秘密保持義務が続くと定めており、期限はありません。運営基準も従業者であった者を対象にしています。年数ではなく、利用者や元同僚が特定できる内容かどうかで考えてください。

参考資料・出典

この記事を書いた人

編集部

介護ワーカーズナビ編集部

介護職向け情報メディアの編集チーム

厚生労働省などの公的統計や制度資料をもとに記事を作成しています。数値には出典と年度を記載し、制度が変わったときに内容を見直しています。

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