退職後、健康保険や年金、失業保険の手続きをどこから始めればよいか迷う介護職の方は多いでしょう。実際には、国民健康保険と国民年金は退職日の翌日から14日以内、任意継続は20日以内と、法令で期限が決まっている手続きがあります。2025年4月からは自己都合退職の給付制限が原則1か月になり、教育訓練を受けると給付制限が解除される仕組みも始まりました。この記事では、退職後の手続きを期限順に並べ、研修受講で給付制限が解除される条件や資格費用の返還への対応までまとめました。退職を決めた方や、退職したばかりの方に向けた内容です。
この記事でわかること
- 退職後の手続きの期限と窓口
- 健康保険の3つの選択肢と、国民年金への切り替え方
- 2025年4月からの給付制限と、研修受講で解除される条件
- 住民税・所得税の扱いと、資格費用の返還を求められたときの相談先
退職後の手続きを期限順に確認する
退職後の手続きは窓口も期限もばらばらですが、多くは退職日の翌日から数えます。有給休暇を消化してから辞める場合も、起点は最終出勤日ではなく退職日です。有給の消化は介護職の有給休暇で解説しているので、ここでは退職後に動く順番を整理します。
期限順のチェックリスト
次の表は、すぐに次の職場に入らない場合の主な手続きです。健康保険は3つから1つを選ぶため、すべてを行うわけではありません。
| 期限の目安 | 手続き | 窓口 |
|---|---|---|
| 退職日の翌日から14日以内 | 国民健康保険への加入 | 住所地の市区町村 |
| 退職日の翌日から14日以内 | 国民年金の種別変更 | 市区町村・年金事務所・マイナポータル |
| 退職日の翌日から20日以内 | 健康保険の任意継続の申出 | 協会けんぽの支部・健康保険組合 |
| 離職票が届いたら早めに | 求職の申込みと離職票の提出 | 住所地のハローワーク |
| 納付書が届いたら | 住民税の普通徴収分の納付 | 市区町村 |
| 翌年1月1日から5年以内 | 還付申告(年末調整を受けていない場合) | 税務署 |
会社から受け取る書類
退職前の準備は介護職の円満退職ガイドにまとめています。退職後の手続きに使う書類は次の4つで、届かなければ早めに会社へ確認してください。
- 雇用保険被保険者離職票(-1、-2)。失業保険の手続きに使う
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票。所得税法第226条で、退職の日以後1か月以内に交付すると定められている
- 基礎年金番号通知書または年金手帳
退職金の支給時期は介護職の退職金で確認しておきましょう。
健康保険と年金の切り替え
退職日の翌日から、勤務先の健康保険と厚生年金の被保険者ではなくなります。次の職場まで期間が空くときは、健康保険を3つの選択肢から選び、年金は国民年金に切り替えます。どちらも期限が短いので、離職票を待たずに先に済ませましょう。
国民健康保険・任意継続・家族の扶養
国民健康保険は、国民健康保険法施行規則第3条により、資格を取得してから14日以内に世帯主が市区町村へ届け出ます。任意継続は、健康保険法第37条により資格を失った日から20日以内に申し出る仕組みで、加入できる期間は同法第38条により最長2年です。
| 選択肢 | 主な条件 | 期限 | 保険料の考え方 |
|---|---|---|---|
| 国民健康保険 | ほかの健康保険に入らない人 | 14日以内 | 前年の所得などで市区町村が計算 |
| 任意継続 | 退職日まで継続して2か月以上加入 | 20日以内 | 在職中の会社負担分も自己負担 |
| 家族の扶養 | 家族の健康保険の収入要件を満たす | 家族の勤務先で手続き | 本人の保険料はかからない |
国民健康保険と任意継続の保険料は、それぞれの窓口で金額を確かめてから比べましょう。家族の扶養は、協会けんぽでは年間収入130万円未満(60歳以上などは180万円未満)で、同居なら被保険者の年間収入の2分の1未満が目安です。健康保険組合は基準が異なることもあるので、家族の勤務先で確認してください。
国民年金への切り替えと保険料の軽減
20歳以上60歳未満の方は、国民年金法第12条と同法施行規則第6条の2により、退職日の翌日から14日以内に第1号被保険者への種別変更を届け出ます。配偶者の扶養に入って第3号被保険者になる場合は、配偶者の勤務先を通じて手続きします。
保険料の負担が重いときは、次の制度があります。
- 国民年金は、退職した方の前年所得をゼロとして審査する特例免除があり、離職票などの写しを添えて申請する
- 国民健康保険は、特定受給資格者(倒産・解雇など)と特定理由離職者について、前年の給与所得を30/100として保険料を計算する
どちらも申請が必要です。
失業保険の手続きと2025年4月からの給付制限
失業保険は雇用保険の基本手当のことで、働く意思と能力があるのに仕事が見つからない状態であることが受給の前提です。2025年4月1日以降の退職から、自己都合退職の給付制限が原則2か月から1か月に短くなりました。
受給の条件と給付日数
受給には原則として、離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上必要です。特定受給資格者と特定理由離職者は、離職の日以前1年間に6か月以上あれば対象になります。自己都合退職などの所定給付日数は、被保険者期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日、20年以上なら150日で、受給期間は原則として離職日の翌日から1年間です。
ハローワークでの手続きの流れ
住所地のハローワークで求職を申し込み、離職票を提出すると受給資格が決まります。そこから7日間は待期と呼ばれ、基本手当は出ません。その後は初回説明会に参加し、原則として4週間に1度、失業の認定を受けます。持ち物は離職票、マイナンバーカードなどの本人確認書類、写真、本人名義の通帳かキャッシュカードです。
給付制限は原則1か月に
正当な理由のない自己都合退職では、雇用保険法第33条により、待期の後に基本手当が出ない期間があり、これを給付制限といいます。厚生労働省のリーフレットでは、退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月、3月31日以前なら原則2か月です。ただし、退職日からさかのぼって5年間に、正当な理由のない自己都合退職で2回以上受給資格決定を受けている場合は3か月になります。
給付制限がかからない退職理由
自己都合の扱いでも、ハローワークに特定受給資格者か特定理由離職者と認められれば給付制限はかかりません。ハローワークが示す範囲には、次のような項目があります。
- 離職直前6か月のうち連続する3か月で45時間を超える時間外労働があった
- 上司や同僚からの故意の排斥や著しい冷遇、嫌がらせを受けた
- 父母の扶養や親族の看護が必要になるなど、家庭の事情が急変した
該当するかはハローワークが判断します。離職票の離職理由が実態と違う場合は、タイムカードや給与明細などを持参して伝えましょう。
初任者研修・実務者研修を受けると給付制限が解除される
2025年4月からは、自己都合退職でも教育訓練を受けると給付制限が解除されます。離職中に初任者研修や実務者研修を受ければ、資格の取得と基本手当の受給を両立しやすくなります。対象になる講座と申し出の期限に条件があるので、順に確認します。
対象になる訓練と条件
根拠は雇用保険法第33条第1項ただし書きです。厚生労働省のリーフレットでは、教育訓練給付金の対象となる教育訓練や公共職業訓練等を、離職日前1年以内に受けた方、または離職日以後に受けている方が対象です。受講開始が2025年4月1日以降のものに限られ、途中退校は該当しません。離職後に受講を始めた場合は、受講開始日以降の給付制限がかからなくなります。
指定講座かどうかを確かめる
厚生労働省の教育訓練給付金のリーフレットは、介護職員初任者研修と介護福祉士実務者養成研修を一般教育訓練の対象講座の例に挙げています。ただし指定は講座ごとで、スクールによって指定の有無が違うため、申し込む前に教育訓練給付金検索システムで講座名を検索して確かめてください。研修の内容は介護職員初任者研修とはと実務者研修とはで解説しています。
申し出の期限と必要書類
給付制限の解除は、自分からハローワークに申し出る必要があります。リーフレットでは、受講開始以降、受給資格決定日か初回認定日までに申し出ることとされ、初回認定日の後に受講を始めた場合は受講開始日直後の認定日が期限です。受講中なら訓練開始日が記載された領収書か施設の証明書、修了済みなら修了証明書などを持参します。
住民税と所得税の手続き
住民税は前年の所得にかかるため、退職後も納付が続きます。所得税は年末調整を受けていないと納め過ぎになっていることがあり、確定申告で戻る場合があります。どちらも退職した月と再就職の有無で扱いが変わる点に注意してください。
住民税は退職月で払い方が変わる
在職中の住民税は、6月から翌年5月までの12回に分けて給与から差し引かれるのが特別徴収です。地方税法第321条の5第2項により、1月1日から4月30日までに退職した場合は、5月までの残りを最後の給与や退職手当からまとめて差し引くのが原則です。6月から12月の退職では、申し出れば一括で差し引かれ、申し出がなければ納付書で納める普通徴収に切り替わります。
年末調整を受けていなければ確定申告
国税庁のタックスアンサーによると、年の途中で退職して同じ年に再就職しなかった場合は年末調整を受けられず、所得税が納め過ぎになっていることがあります。翌年以降に確定申告をすれば還付を受けられ、申告書は翌年1月1日から5年間提出できます。申告には源泉徴収票が必要です。
会社から資格費用の返還を求められたら
介護では初任者研修や実務者研修の費用を法人が負担することがあり、退職を伝えた後に返すよう求められる場合があります。返還が認められるかは契約の中身によって変わるため、支払う前に判断のポイントと相談先を確かめておきましょう。
労働基準法16条と判断のポイント
労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする契約を禁じています。厚生労働省のスタートアップ労働条件のQ&Aは、一定期間勤めずに退職したら研修費用を返させる仕組みはこの規定に当たる可能性がある一方、純粋な貸し借りの契約で一定期間働けば返還が免除される仕組みなら違反にならないと説明しています。資格取得が業務命令によるものか、返済方法が決められていたかなどを総合的に見て判断されます。
返還を求められたときの相談先
まずは雇用契約書や就業規則、研修のときに署名した書類で、費用の扱いがどう書かれているかを確かめてください。判断に迷う場合は、各都道府県労働局や労働基準監督署内などに設置された総合労働相談コーナーに相談できます。法律違反の疑いがあれば、労働基準監督署などの担当部署に取り次いでもらえます。
次の職場探しで使える制度
介護分野には再就職する人向けの公的な貸付制度があり、2年間働けば返済が免除されます。基本手当を受けながら次の職場を探す場合も、入職前に済ませる手続きがあるので、求人探しと並行して確認しておきましょう。
再就職準備金と介護分野就職支援金
介護の経験が1年以上あり、介護福祉士・実務者研修・初任者研修のいずれかがある方は、再就職準備金(40万円以内)の対象になりえます。未経験で研修を修了した方向けには、介護分野就職支援金(20万円以内)があります。都道府県によっては、就職する前に福祉人材センターへの届出が必要です。条件や申請の順番は介護職のブランク復職ガイドで都道府県ごとに比べています。
次の職場に入る時期
基本手当の受給期間は原則1年で、給付日数を使い切る前に就職してもかまいません。求人が増える時期は介護職の転職時期で取り上げています。手続きの期限と入職予定日は、同じカレンダーに書いておきましょう。
まとめ
退職後の手続きは、最初の2週間に期限が集中しています。
- 国民健康保険と国民年金は退職日の翌日から14日以内、任意継続は20日以内
- 2025年4月1日以降の自己都合退職の給付制限は原則1か月。5年間に2回以上受給資格決定を受けていると3か月
- 指定講座などの受講を始めると給付制限が解除され、ハローワークへの申し出が必要
- 1月から4月の退職は、5月までの住民税が最後の給与などからまとめて差し引かれる
- 資格費用の返還を求められたら、契約書類を確かめて総合労働相談コーナーに相談する
まずは退職日の翌日から14日後の日付を確かめ、市区町村の窓口に行く日を決めましょう。
よくある質問
Q. 離職票がなかなか届かないときはどうすればよいですか?
A. 離職票は勤務先がハローワークで手続きをした後に交付されるため、届くまでに時間がかかることがあります。会社から交付されない場合は、住所地のハローワークに問い合わせるよう案内されています。
Q. 失業保険を受けながら初任者研修を受けられますか?
A. 受けられます。2025年4月1日以降に教育訓練給付金の対象講座などの受講を始めた場合は、自己都合退職でも給付制限が解除されます。指定講座であること、途中で退校しないこと、期限までにハローワークへ申し出ることが条件です。
Q. 家族の介護のために退職した場合も給付制限はかかりますか?
A. 父母の扶養や親族の看護が必要になるなど、家庭の事情が急変して離職したときは、特定理由離職者として給付制限がかからないことがあります。該当するかはハローワークが判断するため、手続きの際に事情を説明しましょう。
参考資料・出典
- 雇用保険法 第33条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116
- 雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ 給付制限の解除(厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク、2025年)https://www.mhlw.go.jp/content/001441564.pdf
- 基本手当について(ハローワークインターネットサービス)https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
- 基本手当の所定給付日数(ハローワークインターネットサービス)https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
- 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲(ハローワークインターネットサービス)https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html
- 教育訓練給付金のご案内(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/content/11804000/001533748.pdf
- 教育訓練給付金 検索システム(厚生労働省)https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/
- 国民健康保険法施行規則 第3条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/333M50000100053
- 健康保険法 第37条・第38条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070
- 任意継続被保険者となるための要件(全国健康保険協会)https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sb3180/sbb3180/1984-6168/
- 被扶養者の認定における特例について(全国健康保険協会)https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/public_relations/004/index.html
- 国民年金法 第12条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141
- 国民年金法施行規則 第6条の2(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/335M50000100012
- 転職をご検討中の方へ 国民年金の加入、保険料免除・納付猶予制度のご案内(日本年金機構)https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/taishoku_menjo.html
- 国民健康保険の保険料・保険税について 非自発的失業者に対する軽減措置(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21517.html
- 地方税法 第321条の5(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 所得税法 第226条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1910.htm
- 労働基準法 第16条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- スタートアップ労働条件 事業主向けQ&A その他 Q7(厚生労働省)https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/qa/zigyonushi/sonota/q7.html
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html













