ケアマネとして数年働くと、主任の研修を勧められたり、居宅介護支援事業所の管理者を続けるには主任が必要だと言われたりする場面が出てきます。ところが受講要件や受講料は都道府県ごとに違い、更新制廃止の話も重なって全体像がつかみにくいものです。この記事では、厚生労働省の研修実施要綱や介護保険部会の資料をもとに、要件、研修と費用、申込の流れ、主任になって変わること、更新制廃止後の扱いを整理しました。主任を目指すケアマネの方や、管理者要件を満たす必要がある方に向けた内容です。
この記事でわかること
- 主任ケアマネになるための要件(専任5年など)と兼務期間の数え方
- 主任介護支援専門員研修70時間の科目と、都道府県別の受講料
- 募集の時期と申込で求められる書類
- 主任になると変わること(管理者要件・特定事業所加算・給料)
- 更新制廃止後の主任研修の扱い(2026年11月時点で未確定)
主任ケアマネになるには専任5年と70時間の研修が必要
主任ケアマネになるには、専任のケアマネとして通算5年(60か月)以上働き、都道府県が行う70時間以上の主任介護支援専門員研修を修了します。試験はなく、研修の修了で主任になります。主任の位置づけと、修了までの流れから見ていきます。
主任ケアマネ(主任介護支援専門員)とは
正式名称は主任介護支援専門員で、介護保険法施行規則第140条の66に定められています。ほかのケアマネへの助言・指導を担い、地域包括支援センターに置かれるほか、居宅介護支援事業所の管理者の要件にもなっています。前提となるケアマネ資格の取り方はケアマネになるまでの流れと最短ルートで解説しています。
主任になるまでの4ステップ
流れは、要件の確認、都道府県の募集への申込、70時間の研修、修了証明書の交付の4段階です。申込時には担当した居宅サービス計画などを提出し、研修の終わりには到達目標を達成できたかの修了評価があります。
主任の修了証明書の有効期間は、2026年11月時点の制度では5年です。ケアマネの登録や介護支援専門員証とは別のもので、証の手続きはケアマネ試験合格後の実務研修と登録の流れで紹介しています。
主任介護支援専門員研修の受講要件
受講要件の基本は、厚生労働省の「介護支援専門員資質向上事業の実施について」(平成26年老発0704第2号、令和6年3月28日改正)の別添5「主任介護支援専門員研修実施要綱」にあります。都道府県は独自の要件を加えてよいとされているため、国の要件と県の要項の両方を確かめます。
4つの要件のいずれかと専門研修の修了
実施要綱の対象は、専門研修課程ⅠとⅡ、または実務経験者向けの更新研修を修了し、次のいずれかに当てはまる人です。
- 専任のケアマネとして通算5年(60か月)以上従事した人
- ケアマネジメントリーダー養成研修の修了者か認定ケアマネジャーで、専任として通算3年(36か月)以上の人
- 主任に準ずる者として、地域包括支援センターに配置されている人
- その他、都道府県が適当と認める人
多くの人が当てはまるのは専任5年です。あわせて、提出したケアプランから自立支援に役立つケアマネジメントを実践できていると認められる必要があります。
専任の意味と兼務期間の扱い
実施要綱では、管理者との兼務期間は通算してよいとされています。神奈川県は専任を常勤専従とし、居宅介護支援事業所や介護予防支援事業所の管理者以外の職種を兼ねた期間は数えません。大阪府は、常勤のケアマネとして働いた期間も含めて通算5年以上あれば対象にしています。実務経験の数え方はケアマネの受験資格と実務経験の数え方も参考になります。
施設ケアマネや地域包括の期間も数えられる
専任の期間は居宅介護支援事業所に限りません。実施要綱は、地域包括支援センター、特定施設、小規模多機能型居宅介護、グループホーム、介護保険施設などでケアマネとして従事した期間も含むとしています。グループホームの計画作成担当者はグループホームのケアマネの仕事内容と給料で取り上げています。
申込時点で要件を満たしていることが前提
神奈川県の要項では、研修初日に5年に達する場合や、専門研修課程Ⅱを修了する見込みの段階では申し込めません。現にケアマネとして従事していることも求めています。5年に達する時期と県の募集時期を照らし合わせておきましょう。
研修の内容・時間と受講料
主任介護支援専門員研修は、講義と演習を合わせて70時間以上です。後輩ケアマネへの指導や地域づくりの技術を学びます。受講料は都道府県で2万円台から6万円台まで差があるため、科目の内訳とあわせて県別の金額を確認します。
70時間・9科目の内訳
科目と時間数は実施要綱で次のように定められています。
| 科目 | 形式 | 時間 |
|---|---|---|
| 主任介護支援専門員の役割と視点 | 講義 | 5時間 |
| ケアマネジメントの実践における倫理的な課題に対する支援 | 講義 | 2時間 |
| 終末期ケアを含めた生活の継続を支える基本的なケアマネジメント及び疾患別ケアマネジメントの理解 | 講義 | 3時間 |
| 人材育成及び業務管理 | 講義 | 3時間 |
| 運営管理におけるリスクマネジメント | 講義 | 3時間 |
| 地域援助技術(コミュニティソーシャルワーク) | 講義・演習 | 6時間 |
| 地域における生活の継続を支えるための医療との連携及び多職種協働の実現 | 講義・演習 | 6時間 |
| 対人援助者監督指導(スーパービジョン) | 講義・演習 | 18時間 |
| 個別事例を通じた介護支援専門員に対する指導・支援の展開 | 講義・演習 | 24時間 |
70時間のうち42時間を、スーパービジョンと事例を使った指導の演習が占めます。大阪府の2026年度の研修は12日間・72時間で、70時間を上回っています。
都道府県別の受講料
厚生労働省が第137回介護保険部会に示した令和6年度の調べでは、受講者負担の全国平均は主任研修47,031円、主任更新研修37,637円でした。2026年度の要項を確認できた県と並べます。
| 都道府県 | 主任研修(令和6年度) | 主任更新研修(令和6年度) | 主任研修(2026年度要項) |
|---|---|---|---|
| 神奈川県 | 50,900円 | 40,700円 | 50,900円 |
| 愛知県 | 66,000円 | 60,500円 | 実施機関の案内で確認 |
| 大阪府 | 56,300円 | 36,500円 | 56,300円(テキスト代含む) |
| 滋賀県 | 38,000円 | 26,260円 | 35,000円 |
| 全国平均 | 47,031円 | 37,637円 | ― |
令和6年度の金額は、愛知県のように複数の機関が実施する県では平均値です。金額は年度で変わるため、申込年度の要項で確かめてください。
費用の負担と教育訓練給付
受講料を本人と事業所のどちらが払うかは法令に定めがなく、事業所の規程によります。神奈川県の主任研修と主任更新研修は、教育訓練給付制度の特定一般教育訓練の指定講座です。給付には、講座開始の1か月前までにキャリアコンサルティングを受け、ハローワークで手続きをしておく必要があります。
申込の流れと募集時期
主任研修の募集は都道府県ごとに行われ、時期も回数もまちまちです。申込には勤務先が発行する従事証明書も要るため、締切の直前では間に合わないことがあります。2026年度の例を見ながら、5年に達する時期から逆算して準備を始めましょう。
募集は都道府県ごとに年1〜2回
神奈川県は2026年9月に募集し、12月から2027年3月に実施します。定員は500人で、オンラインと対面のコースがあります。大阪府は前期と後期の2回で、後期の仮申込は2026年5月12日から6月16日でした。滋賀県は8月20日締切で、10月から翌年3月に実施しています。
申込で求められる書類
神奈川県では、サービス計画書の第1表から第3表、ケアプランチェックシート、課題レポート、介護支援専門員証や修了証明書の写し、勤務先の業務従事証明書を提出します。推薦書などの要否は県で異なるため、申込先の要項で確かめてください。研修は数か月にわたるので、勤務扱いや受講料の負担も事業所と決めておくと安心です。
主任ケアマネになると変わること
主任になると居宅介護支援事業所の管理者を務められるようになり、事業所が特定事業所加算を取るための人員にも数えられます。一方で給料が上がるかどうかは制度では決まっていないため、制度上変わることと給料の考え方を分けて確認します。
居宅介護支援事業所の管理者になれる
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第3条第2項は、管理者を主任ケアマネとしています。主任の確保が著しく困難であるなど、やむを得ない理由がある場合は、主任でないケアマネを管理者にできます。
2021年3月31日時点で主任でない人が管理者だった事業所は、その人が管理者を続ける限り、2027年3月31日まで適用が猶予されています(平成30年厚生労働省令第4号附則第3条)。介護保険部会の意見書は管理者要件を引き続き介護給付費分科会で検討するとしており、2026年11月時点で期限を延ばす決定は確認できません。この要件が噂の背景になった経緯はケアマネ資格廃止の噂の真相で紹介しています。
特定事業所加算の人員要件
居宅介護支援の特定事業所加算は、常勤専従の主任ケアマネの配置が要件の一つです。2024年度介護報酬改定後の単位数と人員要件は次のとおりです。
| 区分 | 単位数(月) | 常勤専従の主任ケアマネ | 常勤専従のケアマネ |
|---|---|---|---|
| 加算(Ⅰ) | 519単位 | 2名以上 | 3名以上 |
| 加算(Ⅱ) | 421単位 | 1名以上 | 3名以上 |
| 加算(Ⅲ) | 323単位 | 1名以上 | 2名以上 |
| 加算(A) | 114単位 | 1名以上 | 常勤・非常勤各1名以上 |
ほかに24時間の連絡体制や計画的な研修の実施なども要件です。
地域包括支援センターと事業所内の指導役
地域包括支援センターには、保健師、社会福祉士と並んで主任ケアマネを置きます。実施要綱は主任の役割として、ほかのケアマネへの助言・指導、事業所の人材育成と業務管理、地域づくりを挙げています。
給料は事業所の規程次第
令和6年度介護従事者処遇状況等調査は介護支援専門員として集計しており、主任かどうかを分けた平均給与額は示されていません。主任手当や管理者手当の有無と金額は事業所の給与規程で決まるため、求人票や規程で確認してください。
更新制廃止と主任研修の今後
ケアマネの更新制は法律で廃止が決まりましたが、施行日は政令で定められ、主任の研修の扱いはこれから省令などで決まります。2026年11月時点で確定していることと、案の段階のことを分けて整理します。
改正法で決まったこと
更新制の廃止は、社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号、2026年6月25日公布)で確定しました。施行日は公布から1年6か月を超えない範囲で政令で定める日です。厚生労働省は第137回介護保険部会(2026年10月26日)で2027年12月1日とする案を示しましたが、2026年11月時点で政令は公布されていません。改正の全体像は2026年の介護保険法改正と施行日で解説しています。
主任更新研修は主任定期研修に替える案
介護保険部会の意見書では、主任の更新制も同様に廃止することが適当とされました。第137回の資料3では、主任更新研修を主任定期研修(46時間以上)に替え、主任研修の修了日から5年を一区切りに分割して受講する案が示されています。最初の5年間は受講不要とされていますが、いずれも案の段階で、施行後の運用は政令や省令、通知で決まります。
主任研修70時間は変えない案
同じ資料では、主任介護支援専門員研修そのものは従前から変更しないとされています。施行までは今の制度が続き、主任の更新には46時間の主任更新研修が必要です。更新制が廃止されるまでの更新研修の扱いは2026年の介護保険法改正で整理しています。
まとめ
主任ケアマネになるには、専門研修課程Ⅰ・Ⅱなどを修了し、専任のケアマネとして通算5年以上の実務を積んだうえで、70時間以上の主任介護支援専門員研修を修了します。押さえておきたい点は次の4つです。
- 兼務期間の数え方は県で異なり、申込時点で要件を満たす必要がある
- 受講料は令和6年度の全国平均で47,031円
- 主任は管理者要件と特定事業所加算の人員要件に関わる
- 更新制の廃止は確定、主任定期研修への移行は案の段階
5年に達する時期と県の募集時期を確かめ、事業所と相談しながら準備を進めてください。
よくある質問
Q. 施設ケアマネの経験は専任5年に数えられますか?
A. 数えられます。実施要綱は、介護保険施設やグループホームなどでケアマネとして従事した期間を含むとしています。ただし管理者以外の職種と兼務していた期間を数えない県もあるため、申込先の要項で確認してください。
Q. 研修に落ちることはありますか?
A. 試験はありませんが、実施要綱は各科目の到達目標を達成しているかの修了評価を求めています。やむを得ない事情で受けられなかった科目は、別の回で受講できる扱いがあります。
Q. 主任ケアマネを更新しないことはできますか?
A. できます。2026年11月時点の制度では、主任更新研修を受けなければ有効期間の満了で主任ではなくなります。ケアマネとして働き続けるには、介護支援専門員証の有効期間内に通常の更新研修を修了する必要があります。
Q. 研修の費用は事業所が負担してくれますか?
A. 負担者を定めた法令はなく、事業所の規程によります。申込前に勤務先に確認しておきましょう。神奈川県の研修のように、教育訓練給付の対象になる講座もあります。
参考資料・出典
- 介護保険最新情報Vol.1233「介護支援専門員資質向上事業の実施について」の一部改正(厚生労働省老健局、2024年3月28日。別添5 主任介護支援専門員研修実施要綱、別添6 主任介護支援専門員更新研修実施要綱) https://www.mhlw.go.jp/content/001236292.pdf
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第3条、附則(平成30年厚生労働省令第4号)第3条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100038
- 居宅介護支援・介護予防支援(社会保障審議会介護給付費分科会 第259回 資料6、厚生労働省老健局、2026年6月29日) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716151.pdf
- 介護支援専門員法定研修の見直しの検討状況について(社会保障審議会介護保険部会 第137回 資料3、厚生労働省老健局、2026年10月26日。令和6年度介護支援専門員の法定研修受講者負担を含む) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001762527.pdf
- 社会福祉法等の一部を改正する法律案 本文(衆議院、第221回国会閣法第45号) https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g22109045.htm
- 令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果(厚生労働省、2025年) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/index.html
- 主任介護支援専門員研修・主任介護支援専門員更新研修(神奈川県、2026年度) https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n7j/cnt/f3721/p553196.html
- 神奈川県主任介護支援専門員研修対象者について(神奈川県) https://www.pref.kanagawa.jp/documents/22198/taisyousya-yousei.pdf
- 令和8年度大阪府主任介護支援専門員研修(後期)について(大阪府、2026年6月17日更新) https://www.pref.osaka.lg.jp/kaigoshien/care/syunin30.html
- 主任介護支援専門員研修(介護支援専門員法定研修)(滋賀県、令和8年度、2026年9月11日更新) https://www.pref.shiga.lg.jp/ed00/4616.html
- 介護支援専門員の研修制度(愛知県、2026年5月13日更新) https://www.pref.aichi.jp/site/aichi-caremanager/care-manager-kensyuu.html














