日中は子育てや勉強、別の仕事に使い、介護は夜勤だけにしたいと考えて夜勤専従の求人を見ている方もいるでしょう。ところが、月に何回まで入れるのか、パートでも社会保険に入るのか、給料はどう決まるのかは、求人票だけでは分かりにくいものです。この記事では、労働基準法と厚生労働省などの資料をもとに、回数の上限、給料、社会保険、雇用形態、求人票の確認点を2026年11月時点の制度で整理しました。夜勤専従を検討している介護職の方に向けた内容です。
この記事でわかること
- 夜勤専従の回数の上限が、法律ではなく何で決まるか
- 夜勤手当・深夜割増・回数で給料が決まる仕組みと計算例
- 夜勤専従のパートが社会保険と雇用保険に入る条件
- 正社員・パート・派遣の違いと、求人票で確かめる点
介護の夜勤専従とは
夜勤専従は、日勤に入らず夜勤だけを担当する働き方です。回数の上限を定めた法律はなく、変形労働時間制や36協定の枠で決まります。パートでも週20時間以上の契約なら勤務先の社会保険の対象になり、収入は夜勤手当と深夜割増に回数を掛けた額が中心です。
夜勤だけを受け持つ働き方
介護施設の夜勤は2交代が主流で、労働組合である日本医療労働組合連合会(日本医労連)の2025年介護施設夜勤実態調査では、回答施設の91.1%が2交代でした。2交代の夜勤は17時から翌9時のように16時間前後の拘束で、1回の出勤が2暦日にまたがります。
夜勤中の業務の流れは介護職の夜勤の仕事内容とタイムスケジュールで紹介しています。
夜勤専従の求人が出る施設と夜勤の人員基準
夜勤専従を置くのは、特養、老健、グループホーム、有料老人ホームなど24時間体制の施設です。夜勤の人数には最低ラインがあり、厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準(平成12年厚生省告示第29号)は、従来型の特養で利用者25人以下なら1人以上、26〜60人なら2人以上としています。老健は原則2人以上、グループホームは共同生活住居(ユニット)ごとに1人以上です。
日本医労連の同調査では、グループホームの夜勤者の14.8%が夜勤専従でした。夜勤は宿直とは別の勤務で、違いは介護の宿直と夜勤の違いで解説しています。
夜勤専従のメリットと注意点
利点は、日中の時間をまとまって使えることです。2交代なら1回で約2日分の勤務になるため、出勤の回数が少なくなります。一方で、収入はシフトの回数に左右されます。夜勤明けの日は法律上の休日に数えないこと、1人で夜勤を受け持つ施設があることも、選ぶ前に知っておきたい点です。
夜勤専従は月何回まで働けるか
夜勤専従の求人では月8回や月10回のように回数が示されることがありますが、上限を定めた法律はありません。回数を実際に左右するのは、労働時間を1か月単位でならす変形労働時間制の総枠と、36協定です。総枠の計算を知っておくと、提示された回数が法律の枠内かを判断できます。
回数の上限を決めた法律はない
労働基準法第32条は、休憩を除いて1日8時間、1週40時間を労働時間の上限としています。夜勤の回数を制限する条文はなく、回数は就業規則や雇用契約、シフトで決まります。
1か月単位の変形労働時間制の総枠
16時間前後の夜勤は1日8時間を超えるため、第32条の2の1か月単位の変形労働時間制で組むのが基本です。労使協定か就業規則で定め、各日の労働時間をシフト表で前もって決めれば、1か月の平均が週40時間以内の範囲で8時間を超える日を設けられます。厚生労働省のリーフレットによる総枠は次のとおりです。
| 月の暦日数 | 28日 | 29日 | 30日 | 31日 |
|---|---|---|---|---|
| 週40時間の事業場 | 160.0時間 | 165.7時間 | 171.4時間 | 177.1時間 |
| 週44時間の特例措置対象事業場 | 176.0時間 | 182.2時間 | 188.5時間 | 194.8時間 |
17時から翌9時の夜勤で休憩が2時間なら実働14時間で、31日の月は12回(168時間)、28日の月は11回(154時間)まで総枠に収まります。週44時間の特例は、常時10人未満の保健衛生業などに限られます。
1年単位の変形労働時間制(第32条の4)は、施行規則第12条の4で1日の上限が10時間のため、16時間の夜勤は組めません。総枠を超えて働く分は時間外労働となり、第36条の36協定(原則月45時間・年360時間まで)と、第37条による25%以上の割増賃金が必要です。
「夜勤は月72時間まで」は看護職の診療報酬の要件
夜勤の上限として「月72時間」を見かけることがあります。これは病院の入院基本料(診療報酬)の施設基準で、病棟全体の看護職員の月平均夜勤時間数を72時間以下とする要件です。2026年度の診療報酬改定後の通知でも病棟全体の平均として計算され、一人ひとりの上限ではありません。介護施設の夜勤の基準は先の告示で人数を定めるもので、1人あたりの夜勤時間の上限はありません。
夜勤専従の給料の決まり方
夜勤専従の給料は、基本給や時給に、夜勤手当と深夜割増賃金が加わる形で決まります。このうち法律で支払いが決まっているのは深夜割増だけで、夜勤手当の有無や金額は施設ごとに違います。2つを分けて考えると、求人票の金額を比べやすくなります。
深夜割増は法律、夜勤手当は施設ごと
労働基準法第37条第4項は、午後10時から午前5時までの労働に、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払うよう定めています。夜勤手当は法律上の義務ではない手当で、名称や金額は給与規程で決まります。手当の相場や施設種別の違いは介護職の夜勤手当の相場にまとめています。
月8回・10回の計算例
夜勤手当は、日本医労連の2025年調査で介護職員(正規職員)の2交代の平均だった1回5,973円を使います。深夜割増は、時給換算1,500円の人が深夜帯7時間のうち休憩1時間を除く6時間働いた場合として、1回2,250円で計算しました。
| 月の回数 | 夜勤手当(5,973円×回数) | 深夜割増(2,250円×回数) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 月8回 | 47,784円 | 18,000円 | 65,784円 |
| 月10回 | 59,730円 | 22,500円 | 82,230円 |
これは夜勤で上乗せされる分で、ここに基本給や時給分の賃金が加わります。
2暦日にまたがる夜勤の数え方
午前0時をまたぐ夜勤は一つの勤務として扱い、始業時刻の属する日の1日の労働とされています(昭和63年1月1日基発第1号)。変形労働時間制を定めていない職場で16時間の夜勤をすると、8時間を超えた部分は時間外労働になり、深夜と重なる時間は労働基準法施行規則第20条により50%以上の割増です。
夜勤専従の社会保険と雇用保険
夜勤専従のパートでも、週20時間以上の契約なら勤務先の健康保険と厚生年金の対象になります。夜勤専従は週ごとに勤務時間がばらつきやすいため、1か月の所定労働時間から週の時間を出す計算が、契約回数を決めるときの目安になります。
加入条件は週20時間以上
2026年10月1日に月額8.8万円の賃金要件が撤廃され、パートの加入は、週の所定労働時間が20時間以上、2か月を超えて働く見込み、学生でないこと、勤め先が厚生年金の被保険者51人以上の4つで判定します。規模の要件は2027年10月から段階的に縮小します。詳しくは介護パートの社会保険加入条件を参考にしてください。
夜勤専従パートの週の時間の数え方
厚生労働省の適用拡大Q&Aは、所定労働時間が1か月単位で決まっている場合、1か月の所定労働時間を52/12で割って週の時間を判断するとしています。実働14時間の夜勤で計算すると次のとおりです。
- 月8回(112時間)なら週約25.8時間で、加入の対象
- 月7回(98時間)なら週約22.6時間で、加入の対象
- 月6回(84時間)なら週約19.4時間で、20時間未満
判定は契約上の所定労働時間で行いますが、実際の労働時間が2か月続けて週20時間以上になると、3か月目から対象になる場合があります。
雇用保険は週20時間・31日以上
雇用保険は、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上続けて雇用される見込みがあれば加入します(雇用保険法第6条)。令和6年法律第26号により、2028年10月1日から週10時間以上に広がります。
夜勤手当も保険料の計算に入る
厚生年金保険法第3条の報酬は、名称を問わず労働の対償として受けるすべてのもので、夜勤手当や深夜割増も含まれます。標準報酬月額は毎年4〜6月の報酬をもとに9月に改定されるため、この時期に夜勤が多いと保険料の等級も上がります。
正社員・パート・派遣の夜勤専従を比較
夜勤専従の雇用形態は、正社員、パート・アルバイト、派遣の3つです。給料の形や社会保険の手続き先が違うため、同じ回数でも手取りや待遇は変わります。主な違いを表にまとめました。
| 項目 | 正社員 | パート・アルバイト | 派遣 |
|---|---|---|---|
| 給料の形 | 月給+夜勤手当・深夜割増 | 日給や時給+夜勤手当・深夜割増 | 派遣会社の時給や日給 |
| 回数の決まり方 | 月の所定労働時間に合わせてシフトで決まる | 契約で回数の目安を決める | 派遣契約で決まる |
| 社会保険 | 加入 | 週20時間以上などの条件で加入 | 派遣会社で加入 |
| 雇い主 | 施設の法人 | 施設の法人 | 派遣会社 |
正社員の夜勤専従
正社員は月給制で、変形労働時間制の月の所定労働時間に合わせて夜勤の回数が組まれます。賞与や昇給の規程が夜勤専従の職員にも同じように適用されるかは、就業規則で確かめます。厚生労働省の令和6年度介護従事者処遇状況等調査では、月給・常勤の介護職員の平均給与額は特養で361,860円でしたが、夜勤専従に限らない常勤全体の数字です。
パート・アルバイトの夜勤専従
パートは日給や時給で払われ、日本医労連の同調査では、非正規職員の夜勤手当を1勤務あたりの賃金として払う施設もありました。契約する月の回数によって、社会保険の対象かどうかも変わります。
派遣の夜勤専従
派遣で夜勤専従として働く場合、雇い主は派遣会社で、社会保険や有給休暇の手続きも派遣会社が行います。派遣の仕組みは介護派遣のメリット・デメリットで解説しています。
夜勤専従の求人票で確認すること
夜勤専従は、休憩の取り方や明けの日の扱いが働きやすさを左右します。同じ「夜勤1回◯円」でも、含まれる手当や人員体制は施設ごとに違います。求人票や労働条件通知書に書かれていない点は、面接で質問してかまいません。
勤務時間と休憩・仮眠
労働基準法第34条は、労働時間が8時間を超える場合、少なくとも1時間の休憩を労働時間の途中に与えるよう定めています。16時間の夜勤でも法律上の最低ラインは1時間です。休憩や仮眠の時間と場所、呼び出しへの対応は、夜勤の休憩と仮眠の法律上の扱いを参考に確認しましょう。
明けの日と休日の扱い
労働基準法の休日は、午前0時から24時間の暦日の休業が原則です(昭和23年4月5日基発第535号)。翌朝9時まで働く夜勤明けの日は休日に数えません。終業から次の始業までの休息時間を確保する勤務間インターバルは、労働時間等設定改善法第2条による事業主の努力義務です。明けの翌日が公休か、次の夜勤まで何時間空くかを確認してください。詳しくはシフト・公休・夜勤明けのルールで扱っています。
手当の内訳と夜勤の人員体制
求人票の夜勤1回の金額に含まれるものは施設で違います。比べるときは次の点を確かめます。
- 日給や月給例に、夜勤手当と深夜割増が含まれているか
- 月給例が月何回の夜勤を前提にしているか
- 夜勤が1人体制か複数体制か、応援を呼ぶ仕組みがあるか
内訳が分かれば、施設どうしを同じ条件で比べられます。
まとめ
夜勤専従の条件を比べるときの要点は次の4つです。
- 回数の上限は法律になく、1か月単位の変形労働時間制の総枠と36協定で決まる
- 「月72時間」は看護職の診療報酬の要件で、介護施設には適用されない
- 給料は基本給や時給に、夜勤手当と深夜割増を回数分加えた額になる
- パートでも週20時間以上(月の所定労働時間÷52/12)なら社会保険の対象
よくある質問
Q. 介護の夜勤専従は月何回まで働けますか?
A. 上限を定めた法律はありません。1か月単位の変形労働時間制なら、実働14時間の夜勤は31日の月で12回までが総枠内で、超える分は時間外労働です。
Q. 日中の仕事と掛け持ちで夜勤専従はできますか?
A. 労働基準法第38条により、勤め先が違っても労働時間は通算されます。本業の就業規則で副業が認められているか、両方を合わせた時間外労働の扱いを確認してください。副業の始め方は介護職の副業の始め方にまとめています。
Q. 夜勤専従から日勤に戻れますか?
A. 勤務形態の変更は、職場との合意(労働契約法第8条)や就業規則の定めによります。日勤に移った例や、移る場合の給料・雇用形態の変化を応募の段階で聞いておくと判断しやすくなります。
Q. 夜勤専従でも健康診断はありますか?
A. 事業者には労働安全衛生法第66条で健康診断を行う義務があり、深夜業を含む業務に常時従事する労働者には、労働安全衛生規則第45条により、配置替えの際と6か月以内ごとに1回、定期の健康診断を行うと定められています。対象になるかは勤務先に確認してください。
Q. 夜勤専従と宿直はどう違いますか?
A. 宿直は労働基準監督署長の許可を受けた、ほとんど労働する必要のない勤務です。夜勤は通常の労働で深夜割増の対象です。求人票に宿直とある場合は、夜間に介助をするかを確かめてください。
参考資料・出典
- 労働基準法 第32条・第32条の2・第32条の4・第34条・第35条・第36条・第37条・第38条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働基準法施行規則 第12条の4・第20条・第23条・第25条の2(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
- 1か月単位の変形労働時間制(リーフレットシリーズ労基法32条の2、厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署) https://www.mhlw.go.jp/content/140811-2.pdf
- 1か月単位の変形労働時間制(兵庫労働局) https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/_79872/1kagetsu.html
- 法定休日、所定休日(代休・振替休日含む)と休日労働(大阪府。昭和63年1月1日基発1号、昭和23年4月5日基発535号の解釈を収録) https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/6136/028.pdf
- 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法 第2条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/404AC0000000090
- 勤務間インターバル制度とは(厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト) https://work-holiday.mhlw.go.jp/interval/
- 労働安全衛生法 第66条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
- 労働安全衛生規則 第13条・第45条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
- 厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準(平成12年厚生省告示第29号、厚生労働省法令等データベース) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa0263&dataType=0&pageNo=1
- 平成28年度診療報酬改定の概要 医療従事者の負担軽減・人材確保について③(月平均夜勤時間数の要件、厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000115979.pdf
- 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第7号、厚生労働省保険局医療課長通知、九州厚生局掲載) https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/000456074.pdf
- 2025年介護施設夜勤実態調査結果~報告集~(日本医療労働組合連合会『医療労働』No.698、2026年3月) https://irouren.or.jp/research/2f4e72b66c0cced0b97d1d532a3929318192c380.pdf
- 令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果(厚生労働省、2025年) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/index.html
- 適用拡大Q&A(厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト) https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/qa/
- 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(日本年金機構) https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html
- 短時間労働者の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入拡大のポイント(厚生労働省、令和8年1月作成) https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001633788.pdf
- 厚生年金保険法 第3条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115
- 厚生年金保険の保険料(日本年金機構) https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-01.html
- 雇用保険法 第6条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116
- 雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001255172.pdf
- 労働契約法 第8条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128














