認知症介護実践者研修とは|受講要件・日数・費用の県別比較と修了後の役割

認知症介護実践者研修の要項と日程を確認する介護職員
公開日 執筆 介護ワーカーズナビ編集部

仕事に慣れてきたころ、上司から認知症介護実践者研修の受講を勧められることがあります。ところが、何日かかるのか、受講料はいくらか、修了すると何ができるのかは実施する自治体や法人によって違い、要項を読んでもつかみにくいものです。この記事では、厚生労働省の通知と2026年度の各地の募集要項をもとに、受講要件、カリキュラムと日数、受講料の県別比較、修了で就ける役割と加算との関係を整理しました。受講を勧められた介護職の方や、グループホームの計画作成担当者・管理者を目指す方に向けた内容です。

この記事でわかること

  • 認知症介護実践者研修の位置づけと、ほかの認知症介護研修との関係
  • 受講要件、申込の流れ、カリキュラムと日数
  • 東京都・愛知県・静岡県・横浜市の受講料と日程の比較
  • 修了で就ける役割(配置要件)と、加算との関係

認知症介護実践者研修とは

認知症介護実践者研修は、厚生労働省の「認知症介護実践者等養成事業の実施について」(平成18年3月31日老発第0331010号、2024年4月1日改正適用)にもとづく公的な研修です。認知症介護研修の体系では基礎研修の次の2段目にあたり、グループホームの計画作成担当者などの配置要件になっています。

研修体系は基礎・実践者・実践リーダー・指導者の4段階

国の実施要綱では、介護に直接携わる職員向けの基礎研修から、研修の講師を育てる指導者養成研修まで、認知症介護の研修が段階的に組まれています。通知に書かれた対象者と標準時間は次のとおりです。

研修 主な対象者 標準時間
認知症介護基礎研修 介護に直接携わる、医療・福祉の資格がない職員など eラーニング3時間
認知症介護実践者研修 実務経験おおむね2年程度の介護職員など 講義・演習24時間+職場実習4週間
認知症介護実践リーダー研修 実務経験おおむね5年以上、実践者研修修了後1年以上 講義・演習31時間+職場実習4週間
認知症介護指導者養成研修 介護福祉士などの資格があり、研修の講師を担う予定の人 講義・演習112時間+職場実習5週間など(認知症介護研究・研修センターが実施)

介護の資格全体のなかでの位置づけは、介護の資格一覧|種類・取得順序・費用と給料への影響を解説で取り上げています。実践者研修は国家資格ではなく、修了証書が交付される研修です。

実施するのは都道府県・市町村や指定された法人

実施主体は、都道府県、市町村、または知事・市町村長が指定する法人です。社会福祉協議会や介護福祉士会などが指定を受けて開く地域も多く、同じ県内に複数の実施機関が並ぶことがあります。修了証書は実施主体の長が交付し、修了者は名簿で管理されます。

受講要件と申込の流れ

実践者研修は、現場で2年ほど経験を積んだ介護職員を対象にした研修です。受講要件の大枠は国の通知で決まっていて、県内の事業所に所属していることや、所属長が職場実習に協力して送り出せることといった条件が、各実施機関の要項で上乗せされています。

通知が定める受講要件

厚生労働省の「認知症介護実践者等養成事業の円滑な運営について」(平成18年3月31日老計発第0331007号、2024年4月1日適用の改正後)では、研修対象者を次のように定めています。

  • 原則として認知症介護基礎研修の修了者、またはそれと同等以上の能力がある人
  • 身体介護に関する基本的知識・技術を修得している人
  • 実務経験がおおむね2年程度の人

身体介護の基本は介護職員初任者研修や実務者研修で学ぶ内容と重なる部分です。東京都は、事務職・施設長・生活相談員としての経験だけでは認知症介護の実務経験とみなさないと明記しています。

申込は事業所を通して行う

申込は、所属する事業所の管理者を通して行う形が一般的です。東京都は個人による申込みを受け付けておらず、愛知県社会福祉協議会も所属長の承認を得たうえで勤務先から申し込むよう求めています。職場実習に同僚の協力が欠かせないため、所属長が受講者を送り出せることを要件に入れる要項が多くあります。

グループホームの開設や管理者・計画作成担当者の交代に伴う受講には、市区町村を通じた推薦の枠を設ける自治体もあるため、交代の予定が決まったら市区町村の担当課に早めに相談してください。

募集時期は自治体ごとに違う

募集の時期はまちまちです。東京都の2026年度第1〜4回は2026年1月に締め切られ、静岡県介護福祉士会は会場により4月下旬から6月上旬、愛知県社会福祉協議会の第3回は7月1日から8月18日まででした。定員に達し次第締め切る要項もあるため、前年度末から実施機関の案内を確認しておきましょう。

カリキュラムと日数

実践者研修は、講義・演習と職場実習を組み合わせた研修です。講義・演習で学んだ内容をもとに自分の職場で実習の計画を立て、4週間かけて実践し、結果を報告するところまでが課程に含まれます。講義の日に出席するだけでは修了できない点が、ほかの研修との違いです。

標準カリキュラムは講義・演習24時間と職場実習4週間

国の標準カリキュラムは、講義・演習24時間(1,440分)と、実習(課題設定240分、職場実習4週間、実習のまとめ180分)で構成されています。横浜市の指定を受けた実施機関の2026年度のカリキュラムでは、次の科目が組まれていました。

科目名 時間
認知症ケアの理念・倫理と意思決定支援 180分
QOLを高める活動と評価の観点 60分
家族介護者の理解と支援方法 90分
権利擁護の視点に基づく支援 90分
地域資源の理解とケアへの活用 120分
生活支援のためのケアの演習1 300分
学習成果の実践展開と共有 60分
生活支援のためのケアの演習2 240分
アセスメントとケアの実践の基本 300分
職場実習の課題設定 240分
職場実習評価 180分

修了までは2〜3か月かかる

講義・演習は4〜5日程度に分けて開かれ、その間に4週間の職場実習が入ります。愛知県社会福祉協議会の第3回は10月21日から12月10日まで、東京都の第1〜4回は3月10日のeラーニング開始から5月29日の最終日までが研修期間でした。初日から最終日まで2〜3か月かかると見ておきましょう。

全日程の出席と実習報告が修了の条件

修了証書が交付されるのは、全カリキュラムを受講し、実施主体に修了者として認められた人です。遅刻・早退・欠席は原則認められないため、勤務シフトの調整は申込の段階で職場と相談しておく必要があります。

受講料と日程の県別比較

受講料は、無料の自治体から5万円台の実施機関まで幅があります。下の表は、2026年度の募集要項で確認できた4つの実施例です。同じ県内でも実施機関によって受講料や日程が違う場合があるため、所属先の事業所が申し込める実施機関の要項を確認してください。

実施例 受講料(税込) 講義・演習 職場実習 申込期間の例
東京都 無料 eラーニング+ライブ型WEB研修5日間 約4週間 第1〜4回は2026年1月21日必着
愛知県(愛知県社会福祉協議会) 43,000円 4日間+報告1日 4週間(28日間以上) 第3回は7月1日〜8月18日
静岡県(静岡県介護福祉士会) 会員31,000円、非会員41,000円 4日間+報告会1日 4週間 会場により4月24日・6月1日締切
横浜市(市指定の実施機関) 56,000円 5日間 4週間 第1回は4月2日締切

受講料の負担は職場によって違う

愛知県社会福祉協議会は、受講決定後に受講料の請求書を申込事業所あてに送るとしています。誰が負担するかは要項では決まっておらず、職場の規程によります。研修日を勤務扱いにするかも含め、申込前に上司に確認しておきましょう。

申込人数や受講地域にも制限がある

愛知県社会福祉協議会は1事業所2名まで、東京都の直接申込は1事業所1名までとしています。同じ都道府県内でも、一部の市区は別の実施機関に申し込む場合があります。受講できる地域と、辞退したときの返金の扱いもあわせて確認しておきましょう。

修了で就ける役割(配置要件)

実践者研修は、一部の地域密着型サービスで配置の要件になっています。指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)が、計画作成担当者や管理者に「別に厚生労働大臣が定める研修」の修了を求めているためです。

グループホームの計画作成担当者(第90条)

基準第90条第5項・第6項により、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の計画作成担当者は、厚生労働大臣が定める研修、すなわち認知症介護実践者研修を修了している必要があります。第7項で、そのうち1人以上は介護支援専門員でなければなりません。仕事内容はグループホームのケアマネ(計画作成担当者)の仕事内容と給料で解説しています。

グループホームや認知症対応型通所介護の管理者

グループホームの管理者は、第91条第3項で、3年以上認知症の人の介護に従事した経験と、厚生労働大臣が定める研修の修了が求められます。単独型・併設型の認知症対応型通所介護の管理者も、第43条第2項で同様の研修修了が要件です。厚生労働省の改定資料によると、この研修は実践者研修と認知症対応型サービス事業管理者研修の両方です。職場の様子はグループホームの仕事内容で紹介しています。

小規模多機能型居宅介護の計画作成担当者

小規模多機能型居宅介護は、第63条第10項・第11項で、計画作成を担う介護支援専門員に厚生労働大臣が定める研修の修了を求めています。この小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修の対象は、国の要綱では実践者研修の修了者です。

加算との関係

実践者研修の修了者を置くことで人員要件を満たせる加算は、通所介護と地域密着型通所介護の認知症加算です。認知症専門ケア加算や小規模多機能型居宅介護の認知症加算(Ⅰ)(Ⅱ)は、上位の実践リーダー研修などの修了者が必要になります。以下は、厚生労働省の介護報酬改定資料で確認した要件です。

通所介護の認知症加算

通所介護・地域密着型通所介護の認知症加算(60単位/日)は、サービス提供時間帯を通じて、認知症介護の指導に係る専門的な研修、認知症介護に係る専門的な研修、または認知症介護に係る実践的な研修などの修了者を専従で1名以上置くことが要件の一つです。厚生労働省の令和3年度改定資料では、この研修として認知症介護指導者養成研修、実践リーダー研修、実践者研修の3つが挙げられており、2024年度改定でも研修の要件は変わっていません。2024年度改定で変わったのは、認知症の利用者の割合が100分の15以上に緩和された点と、事例検討や技術的指導の会議の定期開催が加わった点です。該当する研修の最終判断は指定権者が行うため、届出前に確認しておきましょう。

認知症専門ケア加算は実践リーダー研修が必要

認知症専門ケア加算(Ⅰ)は、認知症介護実践リーダー研修等の修了者を対象者の人数に応じて配置することが要件で、(Ⅱ)はさらに認知症介護指導者養成研修の修了者が必要です。実践者研修の修了だけでは要件を満たせません。2024年度改定で新設された小規模多機能型居宅介護の認知症加算(Ⅰ)(Ⅱ)も、実践リーダー研修等の修了者の配置が要件です。

認知症介護基礎研修・実践リーダー研修との違い

認知症介護基礎研修、実践者研修、実践リーダー研修は名前が似ていますが、対象者も目的も違います。基礎研修は無資格の職員が入職後に受ける入口の研修、実践者研修は経験2年程度の職員が認知症ケアの実践力を身につける研修、実践リーダー研修はチームを率いる職員向けの研修です。

認知症介護基礎研修は無資格者に義務

認知症介護基礎研修は、介護に直接携わる職員のうち医療・福祉関係の資格がない人に、事業所が受講させる義務を負う研修です。2021年度に新設され、経過措置が終わった2024年度から義務になりました。原則としてeラーニングで行われ、国の標準カリキュラムは自習3時間です。義務の根拠は介護施設の法定研修一覧|回数・根拠条文と時間外研修の給料で解説しています。

実践リーダー研修はチームを率いる人向け

実践リーダー研修は、介護業務におおむね5年以上従事し、実践者研修の修了から1年以上たった人が対象です。職場内教育やチームケアの体制づくりを学びます。2027年3月31日までは、介護福祉士の資格取得から10年以上、かつ1,800日以上の実務経験がある人は、実践者研修修了から1年たっていなくても受講できる特例があります。

まとめ

認知症介護実践者研修は、実務経験おおむね2年程度の介護職員が対象の公的研修で、講義・演習24時間と職場実習4週間が国の標準です。受講料は東京都の無料から横浜市の実施機関の56,000円まで幅があり、修了までは2〜3か月かかります。修了するとグループホームの計画作成担当者に就け、管理者研修や計画作成担当者研修の受講要件も満たします。認知症専門ケア加算には実践リーダー研修が要るので、次の段階まで見据えて受講する年度を職場と相談しておきましょう。

よくある質問

Q. 個人で申し込むことはできますか?

A. 多くの自治体では、所属する事業所を通じて申し込む仕組みです。東京都は個人による申込みを受け付けておらず、管理者や施設長を通じた申込みとしています。職場実習を所属事業所で行うため、所属先がない場合は受講できるかを実施機関に確認してください。

Q. 修了証に有効期限はありますか?

A. 国の要綱には、修了証書の有効期限や更新の定めは置かれていません。修了者は実施主体の名簿で管理されます。配置の確認や転職の際に提示を求められるため、原本を保管しておきましょう。

Q. 他県で受けた研修は通用しますか?

A. 実践者研修は国の要綱と標準カリキュラムにもとづいて各地で行われています。ただし、配置要件を満たすかを判断するのは事業所を指定する市区町村です。東京都も過去の研修体系で修了した方には区市町村への確認を求めているため、他県で修了した方は配置の届出前に確認しておきましょう。

Q. 修了できないことはありますか?

A. あります。東京都は遅刻・早退・欠席、期日までの課題未提出、受講態度の問題などを未修了の理由に挙げています。愛知県社会福祉協議会も、職場実習の報告が不十分な場合は再提出や再実習を求め、修了を認めないことがあります。

Q. 無資格でも受講できますか?

A. 資格そのものは要件ではありませんが、原則として認知症介護基礎研修の修了またはそれと同等以上の能力と、おおむね2年程度の実務経験が求められます。静岡県介護福祉士会の要綱では、無資格の人は基礎研修の修了が必須とされています。

参考資料・出典

この記事を書いた人

編集部

介護ワーカーズナビ編集部

介護職向け情報メディアの編集チーム

厚生労働省などの公的統計や制度資料をもとに記事を作成しています。数値には出典と年度を記載し、制度が変わったときに内容を見直しています。

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