求人票や勤務表に宿直とあっても、夜勤と何が違うのかまで説明されることは少ないものです。宿直のはずなのに夜中に何度も介助に呼ばれ、この手当で合っているのかと疑問に感じている方もいるでしょう。
実際には、宿直は労働基準監督署長の許可を受けて初めて労働時間の規制から外れる特別な扱いです。名前が宿直でも、中身が夜勤と変わらなければ通常の労働時間として扱われます。
この記事では、労働基準法の条文と厚生労働省・労働局の資料をもとに、宿直と夜勤の違い、社会福祉施設の宿直が許可される条件、宿直中に介助したときの賃金、宿直手当の最低額、適法か確かめる手順を整理しました。
宿直のある職場で働く介護職の方や、労務を担当する方に向けた内容です。
この記事でわかること
- 宿直と夜勤の法律上の違いと比較表
- 介護施設の宿直が許可される条件と、宿直で認められる業務
- 宿直中に介助が必要になったときの賃金の扱い
- 宿直手当の最低額の計算方法
- 自分の宿直が適法か確かめる手順と相談先
介護の宿直と夜勤の違い
夜勤は夜間に通常の業務を行う勤務で、すべてが労働時間です。宿直はほとんど労働する必要のない夜間の待機で、労働基準監督署長の許可を受けた場合に限り、労働時間や休憩の規定が適用されなくなります。
夜勤は労働時間、宿直は許可を受けた待機
東京労働局の資料は、夜勤を夜間に通常勤務と同様の業務を行うものとし、宿直とは区別しています。夜勤では食事や排泄の介助、巡視など日中と同じ性質の業務を行い、午後10時から午前5時までの労働には深夜割増賃金が付きます。
宿直は、定期的な巡視や緊急の電話の受付、非常事態に備えた待機を目的とする勤務です。実際に働く時間がほとんどないため、労働時間の規制から外すことが認められているにすぎません。夜勤の仕事内容は介護職の夜勤の仕事内容|タイムスケジュール・きつさ・向いている人で詳しく紹介しています。
比較表で見る宿直と夜勤
主な違いを表にまとめました。宿直の欄は、許可を受けていることが前提です。
| 項目 | 宿直 | 夜勤 |
|---|---|---|
| 根拠 | 労働基準法第41条第3号、施行規則第23条 | 労働基準法第32条(労働時間) |
| 労基署の許可 | 必要 | 不要 |
| 主な業務 | 巡視、電話の受付、緊急時の待機 | 介助、巡視、記録など通常の業務 |
| 労働時間の扱い | 労働時間・休憩の規定が適用されない | すべて労働時間 |
| 回数 | 原則として週1回まで | 法律上の上限なし |
| 睡眠 | 相当の睡眠設備を設けることが条件 | 休憩・仮眠は施設の定めによる |
| 手当 | 同種の労働者の1人1日平均賃金の3分の1以上 | 夜勤手当は施設が独自に定める |
介護保険の人員基準でも別の勤務
グループホームの人員基準(指定地域密着型サービス基準第90条)は、夜間及び深夜の時間帯を通じて1人以上に「夜間及び深夜の勤務」を行わせるよう定め、この勤務から宿直勤務を除いています。宿直の職員だけでは、夜間の配置基準を満たせないということです。
小規模多機能型居宅介護(同第63条)では、夜間及び深夜の勤務に当たる者を1人以上置くほか、宿直勤務に当たる者を必要な数以上置くとされています。グループホームの夜間の働き方はグループホームの仕事内容|1日の流れ・きついところ・働くメリットも参考にしてください。
宿直の法的な位置づけ
宿直が労働時間の規制から外れるのは、労働基準法第41条第3号と施行規則第23条に根拠があるからです。ただし、深夜割増のように許可を受けても外れない規定があります。外れる規定と残る規定を分けて確認します。
労働基準法第41条第3号と施行規則第23条
労働基準法第41条第3号は、監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたものについて、労働時間、休憩及び休日に関する規定を適用しないと定めています。宿直はこの断続的労働の一つです。
施行規則第23条は、宿直又は日直の断続的な業務について、様式第10号で所轄の労働基準監督署長の許可を受けた場合に、第32条の規定にかかわらず働かせることができるとしています。許可がなければ、宿直と呼んでいても通常の労働時間です。
許可を受けても深夜割増の規定は残る
岩手労働局の資料は、宿直の許可を受けても深夜労働に関する規定の適用は除外されないため、午後10時から午前5時までの労働には2割5分以上の割増賃金が必要だとしています。同じ資料で、宿直手当の最低額は深夜割増賃金を含めた額として示されています。深夜分が宿直手当にどう入っているか、賃金規程で確認しておきましょう。
介護施設の宿直が許可される要件
社会福祉施設の宿直には、どの業種にも共通する一般の許可基準に加えて、施設向けの条件があります。厚生労働省と岩手労働局の資料は両方をまとめて示しており、どちらも満たして初めて許可の対象になります。順に確認していきましょう。
一般の許可基準
一般の許可基準は、東京労働局の資料によると昭和22年9月13日付け発基第17号で示されたものです。主な内容は次のとおりです。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 勤務の態様 | 常態としてほとんど労働する必要のない勤務。通常の労働の継続は許可されない |
| 宿直手当 | 宿直に就く予定の同種の労働者の賃金の1人1日平均額の3分の1以上 |
| 回数 | 宿直は原則として週1回が限度 |
| 睡眠設備 | 相当の睡眠設備を設けること |
社会福祉施設に加わる条件
社会福祉施設の宿直については、厚生労働省(旧労働省)の通達で示された施設向けの基準があり、岩手労働局の資料に次の内容でまとめられています。
- 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること
- 夜間に従事する業務は、一般の宿直業務のほかは、少数の入所者に対して行う夜尿起こし、おむつの取替え、検温などの介助作業で、軽度かつ短時間のものに限ること
- 夜間の生活指導や起床後の着衣の指導など、通常の労働と同じ態様の業務は含まれないこと
少数の入所者への軽度で短時間の介助までは宿直の範囲です。
軽度・短時間の意味
岩手労働局の資料は、軽度と短時間の目安を示しています。軽度とは、おむつの取替えや夜尿起こしであっても、要介護者を抱きかかえるなど身体に負担がかかる場合は含まないという意味です。
短時間とは、介助作業が1回の勤務中に1〜2回までで、1回の所要時間が通常10分程度のものをいいます。
宿直中にしてよい業務・いけない業務
宿直の中心は巡回と連絡、待機で、介助は軽度・短時間のものに限られます。日中と同じ介助が続く時間帯は宿直ではありません。認められる業務、含まれない業務、予定外の介助が必要になったときの扱いを順に見ていきます。
宿直で認められる業務
福井労働局が公開する特別養護老人ホームの申請書の記載例では、宿直は午後7時から午前9時まで、業務は巡回3回(1回30分)、緊急時の管理者への電話連絡、業務日誌の確認・記載、申し送りです。
これに加えて認められるのが、少数の入所者に対する軽度かつ短時間の介助で、抱きかかえない、1勤務に1〜2回、1回10分程度という範囲に限られます。
宿直に含まれない業務
日中と同じ態様の業務は宿直に含まれません。一般の許可基準でも、始業・終業時刻に密着した時間帯に通常の労働を続けることは許可されません。東京労働局の資料も、通常の勤務時間の後に同じ勤務態様が続いている間は拘束から解放されたとはいえない、という考え方を示しています。
宿直の勤務表なのに夕方から夜にかけて介助が続くなら、その時間帯は労働時間です。
宿直中に介助が必要になったとき
厚生労働省・労働局の資料は、許可を受けた宿直中でも、通常の勤務時間と同態様の業務に従事した時間については、労働基準法第36条による時間外労働の手続きをとり、第37条の割増賃金を支払う必要があるとしています。入所者の急病などで軽度・短時間の範囲を超える介助をした時間は、宿直手当とは別に賃金の対象です。
同じ資料は、通常勤務と同態様の業務が宿直中に常態になっている場合は、勤務内容の見直しが必要だとしています。夜勤の仮眠や休憩が労働時間になるかは、介護の夜勤で休憩が取れないのは違法?仮眠は労働時間かを判例で解説で取り上げています。
宿直手当の決まり方
宿直手当は許可基準で最低額が決まっています。相場を示す公的な統計は見当たらないため、この記事で扱うのは最低額の計算方法です。計算式に職場の数字を当てはめれば、基準を満たすかどうかを確かめられます。
最低額は1人1日平均賃金の3分の1
宿直1回の手当の最低額は、その事業場で宿直に就く予定の同種の労働者に支払われる賃金の、1人1日平均額の3分の1です。ここでいう賃金は労働基準法第37条の割増賃金の基礎となる賃金で、家族手当や通勤手当など同条第5項と施行規則第21条で除かれるものは入りません。
計算例
岩手労働局の資料では、宿直に就く職員全員の1か月の所定内賃金の合計を、1か月の所定労働日数×宿直勤務の総員数×3で割った額が手当の最低額になります。仮の数字で計算すると、次のとおりです。
- 宿直に就く職員4人の1か月の賃金合計: 1,008,000円
- 1か月の所定労働日数: 21日
- 1,008,000円÷(21日×4人×3)=4,000円
この例では、宿直1回の手当が4,000円以上でなければ許可基準を満たしません。
夜勤手当・深夜割増との関係
夜勤手当は施設が独自に設ける手当で、夜勤の深夜労働には第37条第4項の深夜割増賃金が別に必要です。夜勤手当の相場は、介護職の夜勤手当はいくら?相場・回数・2交代と3交代の違いにまとめています。
自分の宿直が適法か確かめる手順
宿直に疑問を感じたら、許可の有無、勤務の実態、賃金の順に確かめていくと整理しやすくなります。許可がなければ通常の労働時間ですし、許可があっても実態が基準から外れていれば同じです。職場と話し合うときも外部に相談するときも、事実の記録が出発点になります。
許可を受けているか事業所に確かめる
まず、宿直について労働基準監督署長の許可を受けているかを、上司や事務担当に確認します。許可を受けると「断続的な宿直又は日直勤務許可書」が交付され、回数などの条件が記載されています。許可後もこの条件に沿って宿直を行うことが前提です。
勤務の実態を記録する
宿直のたびに、起こされた時刻、対応した内容とかかった時間をメモし、勤務表や給与明細の控えと一緒に残しておきましょう。軽度・短時間の範囲を超えているかは、この記録がなければ判断できません。
許可がない・実態が夜勤なら割増賃金の対象
許可を受けていない宿直や、介助が常態になっている時間は、通常の労働時間として扱われ、時間外や深夜の割増賃金の対象になります。賃金の請求権の時効は、労働基準法第115条と第143条第3項の経過措置により当分の間3年です。
相談先
職場で解決しないときは、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。労働条件相談ほっとライン(0120-811-610)は平日17時から22時、土日祝日9時から21時の受付です。宿直や夜勤の回数で休みが取りにくい場合は、介護職の有給休暇|付与日数・取り方のコツ・パートの有給と退職時の消化や、介護職の希望休が通らないのは違法?シフト・公休・夜勤明けのルールも参考にしてください。
まとめ
宿直と夜勤は、呼び方ではなく業務の中身と許可の有無で区別されます。要点は次の4つです。
- 夜勤は通常の労働で、すべて労働時間。宿直はほとんど労働しない待機で、労働基準監督署長の許可が必要
- 社会福祉施設の宿直で認められる介助は、抱きかかえを伴わない1勤務1〜2回、1回10分程度まで
- 宿直中に通常と同じ介助をした時間は、時間外労働として割増賃金の対象
- 宿直手当の最低額は、同種の労働者の1人1日平均賃金の3分の1
次の宿直では、起こされた時刻と対応の内容を書き留めるところから始めてみてください。
よくある質問
Q. 宿直明けに日勤をするのは違法ですか?
A. 労働基準法に宿直明けの日勤を直接禁じる条文はありません。ただし宿直の許可は、常態としてほとんど労働する必要のない勤務が前提です。宿直中に介助で働いた時間は労働時間で、時間外労働になれば36協定と割増賃金の対象になります。夜勤明けの休日の扱いは介護職の希望休が通らないのは違法?シフト・公休・夜勤明けのルールで解説しています。
Q. グループホームの1人夜勤は宿直ですか?
A. 宿直ではありません。人員基準(指定地域密着型サービス基準第90条)は、宿直勤務を除く夜間及び深夜の勤務に1人以上を就かせるよう定めており、基準上必要な夜間の職員は夜勤で、その時間はすべて労働時間です。
Q. 宿直は月に何回までできますか?
A. 一般の許可基準では、宿直は原則として週1回が限度です。18歳以上で宿直を行える全員に宿直をさせてもなお足りず、かつ勤務の労働密度が薄い場合には、週1回を超えて許可されることがあります。
Q. 許可がない宿直の未払い賃金は請求できますか?
A. 許可のない宿直は通常の労働時間として扱われるため、割増賃金を含む未払い分を請求できる可能性があります。時効は当分の間3年です(労働基準法第115条、第143条第3項)。
Q. 宿直中の睡眠と夜勤の仮眠は同じ扱いですか?
A. 違います。許可を受けた宿直の睡眠時間には、労働時間の規定が適用されません。夜勤の仮眠は、仮眠中も呼び出しへの対応が義務付けられていれば労働時間に当たるとした大星ビル管理事件の最高裁判決(2002年2月28日)があります。
参考資料・出典
- 労働基準法 第32条・第36条・第37条・第41条・第115条・第143条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働基準法施行規則 第21条・第23条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準 第63条・第90条(平成18年厚生労働省令第34号、e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100034
- 断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外許可申請について(厚生労働省・岩手労働局・労働基準監督署、2021年10月) https://jsite.mhlw.go.jp/iwate-roudoukyoku/content/contents/shukunittyoku.pdf
- 医療機関における宿日直の許可基準について(東京労働局労働基準部監督課) https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/001286640.pdf
- 断続的な宿直又は日直勤務許可申請書(記載例)(福井労働局) https://jsite.mhlw.go.jp/fukui-roudoukyoku/content/contents/001769641.pdf
- 宿日直許可申請を検討する事業主の皆さまなどへ(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署、富山県掲載) https://www.pref.toyama.jp/documents/41023/syukucyokupoint.pdf
- 最高裁判所第一小法廷 平成14年2月28日判決(平成9年(オ)第608号 割増賃金請求事件) https://www.courts.go.jp/hanrei/52614/detail2/index.html
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
- 労働条件相談ほっとライン(厚生労働省) https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/lp/hotline/
※法令・制度の情報は2026年11月時点のものです。














