介護職の奨学金は免除される?修学資金の返還免除と自治体の返済支援

奨学金の返還免除と返済支援の案内を確認する若い介護職員
公開日 執筆 介護ワーカーズナビ編集部

奨学金を返しながら介護の仕事を続けている方や、養成校への進学を考えて返済の見通しが気になっている方は少なくないでしょう。求人票で「奨学金返済支援あり」と見かけることも増えました。

実際には、借りる前に申し込む返還免除つきの貸付と、返済中の奨学金を自治体や事業者が肩代わりする返済支援は別の制度で、対象者も窓口も違います。

この記事では、3つの制度を比較表で整理し、金額・年数・締切を厚生労働省や自治体の要綱で確認した範囲でまとめました。求人票の「奨学金返済支援」が手当なのか代理返還なのかを見分ける方法と、途中で辞めた場合の扱いにも触れています。

奨学金を返済中の介護職の方と、これから介護福祉士を目指す方に向けた内容です。

この記事でわかること

  • 介護職の奨学金を減らす3つの制度と、それぞれの対象者
  • 介護福祉士修学資金の貸付額と、返還が免除される条件
  • 東京都・名古屋市などの奨学金返済支援の金額と申請の流れ
  • 求人票の「奨学金返済支援」が手当か代理返還かを見分ける方法

介護職の奨学金を減らす制度は3種類ある

介護職の奨学金の負担を軽くする制度は、一定年数働けば返済が免除される介護福祉士修学資金、自治体が返済を助成する事業、事業者が本人に代わって日本学生支援機構(JASSO)へ返す代理返還の3つです。日本学生支援機構の奨学金そのものに、介護の仕事に就くと返還が免除される仕組みはありません。

これから学ぶ人と返済中の人で使える制度が違う

返還免除を受けられるのは、養成施設で学ぶために修学資金を借りた人です。すでに日本学生支援機構などの奨学金を返している人は、自治体の返済支援や勤め先の代理返還が選択肢になります。

3つの制度の比較

対象者・仕組み・窓口を並べると次のとおりです。

制度 主な対象 負担が減る仕組み 窓口
介護福祉士修学資金 介護福祉士養成施設の学生(入学予定を含む) 卒業後、介護福祉士として5年間介護業務に従事すると全額免除 都道府県が指定する団体
自治体の返済支援 奨学金を返しながら域内の事業所で働く介護職員 返済額の一部または全部を助成 都道府県・市区町村
事業者の代理返還 勤め先が制度を設けている職員 事業者がJASSOへ直接返還 勤め先

次の章から、制度ごとの条件を見ていきます。

介護福祉士修学資金は5年働けば返還が免除される

介護福祉士修学資金は、介護福祉士養成施設で学ぶ人に、都道府県が指定する団体が修学資金を貸し付ける制度です。卒業後に決められた期間介護の仕事を続けると、返済が全額免除されます。この章の金額は厚生労働省の案内、免除の細かな条件は熊本県の実施要綱(2026年4月1日適用)で確認しました。

貸付額は月5万円以内

厚生労働省の案内では、貸付額は学費が月額5万円以内、入学準備金と就職準備金が各20万円以内、国家試験受験対策費用が年度あたり4万円以内です。熊本県の要綱では無利子で、連帯保証人が必要です。生活保護を受けている世帯などには生活費の加算があり、他の都道府県と重複して借りることはできません。

返還免除の条件

厚生労働省の案内では、卒業後に介護福祉士として5年間介護業務に従事すると全額免除されます。熊本県の要綱では、卒業から1年以内に介護福祉士の登録をし、県内で介護等の業務に5年間続けて従事することが条件です。過疎地域・離島・中山間地域等で働く場合や、入学時に45歳以上で離職から2年以内だった人は3年です。

熊本県の5年は、在職期間が通算1,825日以上、かつ業務に従事した期間が900日以上と数えます。地域や年数の区分は都道府県ごとに要綱で決まるため、借りる県の要項で確かめてください。卒業後1年以内の登録が条件になるため、国家試験の流れは介護福祉士の試験ガイド|受験資格・合格率・パート合格制度を解説で確認しておきましょう。

申込先と募集の時期

申込先は都道府県が指定する団体で、熊本県では県の社会福祉協議会です。募集時期や働く地域の範囲は都道府県で違うため、進学先の県と働きたい県の要項を両方確かめておくと安心です。福祉系高校の生徒向けの修学資金もあり、厚生労働省の案内ではこちらは卒業後3年間の介護業務で全額免除されます。

自治体の奨学金返済支援(すでに返済中の人向け)

すでに奨学金を返しながら働いている方は、自治体の返済支援を使える場合があります。修学資金と違い貸付ではなく、返済額の一部を補助や助成として受ける仕組みです。事業者に補助するタイプと本人に助成するタイプがあり、多くは事業所を通して申請します。

東京都 介護職員奨学金返済・育成支援事業

東京都は平成30年度から、介護職員奨学金返済・育成支援事業を行っています。都内の介護事業所が、奨学金を借りた介護業務未経験者などを常勤の介護職員として採用し、返済相当額を手当として支給するか代理返還した場合に、都が事業者へ補助します。代理返還は令和8年度から補助の対象になりました。

令和8年度の事業者向けチラシでは、補助の上限は1人あたり年60万円(月5万円)、期間は5年間が上限です。事業所側にも、介護職員等処遇改善加算Ⅰ〜Ⅲの取得と、介護職員初任者研修(初任者研修)・実務者研修・介護福祉士を対象とする資格取得支援制度を持つ要件があります。新たに対象となる職員の主な要件は次のとおりです。

  • 2026年1月2日から2027年1月1日までに常勤の介護職員として採用される
  • 介護福祉士となる資格を持っていない
  • 採用前に介護職員として通算6か月を超えて働いた経験がない(学生時代のアルバイトなどを除く)
  • 日本学生支援機構、学校、地方公共団体の貸与型奨学金を返済中である

採用後は育成計画に沿って、1年以内に介護職員初任者研修、3年以内に実務者研修を修了し、4年目と5年目に介護福祉士国家試験を受験します。令和8年度の代理返還方式は、新規の対象者で日本学生支援機構の奨学金を返している人に限られます。申請するのは事業者で、令和8年度の交付申請は2026年11月20日必着が締切です。この締切後に採用予定者がいる場合などに限り、2027年1月8日締切の受付もあります。

名古屋市 介護・障害福祉職員等奨学金返済支援事業

名古屋市の事業は、奨学金を自分で返している職員本人に助成します。令和7年度の要綱(2025年4月1日施行)では、市内の事業所を運営する民間事業者に常勤で直接雇用され、事業者の推薦を受けていることなどが要件で、申請書は事業所を通して提出します。

助成の区分 年額の上限
基本の要件を満たす 15万円
実務者研修修了などで、事業所に継続して3年以上在籍 22.5万円
介護福祉士などの資格を持ち、事業所に継続して4年以上在籍 30万円

実際の返済額が少なければその額が助成額になり、期間は助成開始月から連続する5年間(60か月)が上限です。勤務条件によって返済が免除される資金は対象外のため、修学資金はこの助成を受けられません。令和8年度の内容は市のページで確認してください。

浜松市・文京区・埼玉県など

浜松市は令和8年度から、対象を障害福祉分野などにも広げた地域福祉人材奨学金返済支援事業を行い、雇用から3年を経過していない常勤の介護職員等に、返済額の2分の1(年24万円が上限)を最長3年支給します。

東京都文京区は、区内の事業所で働き奨学金を自分で返している介護職員向けの返済支援補助事業を、令和8年度に非常勤職員も対象に加えるなど拡充しました。埼玉県は令和8年度の予算見積調書に、介護事業所等を通じた奨学金返済支援(1人年18万円、50人分)を計上しています。働く予定の自治体のページも確認してみてください。

事業者の代理返還制度と求人票の見方

求人票の「奨学金返済支援あり」は、自治体の補助を使っている場合も、事業者が独自に行っている場合もあります。支給の方法は、給与に手当を上乗せする方式と、事業者がJASSOへ直接返す代理返還の2つで、税や社会保険料の扱いが違います。

JASSOの代理返還の仕組み

日本学生支援機構は2021年4月1日から、企業などが社員の第一種・第二種奨学金の返還残額を、機構へ直接送金する代理返還を受け付けています。機構の資料では、事業者が肩代わりした額を本人に請求することは想定されていません。ただし返還の責任は本人に残り、手続きをせずに返還が遅れた場合は本人に督促が届きます。

手当方式と代理返還方式で税の扱いが違う

機構の資料によると、代理返還では本人の所得税が非課税となり得て、社会保険料のもとになる報酬にも原則として含めません。給与規程などで給与に代えて返還する場合は報酬に含まれ、役員などは所得税の対象になることがあります。

手当として給与に上乗せする場合は、所得税を非課税とするのは難しいと機構は説明しています。国税庁の質疑応答事例(自治体が奨学金の貸与元へ直接送金する支援金の事例)も、所得税法第9条第1項第15号に基づき、給付が奨学金の返済に充てられる限りは非課税の学資金として扱えるとし、通常の給与に代えて給付されるものは除く考え方を示しています(2025年8月1日現在の法令等に基づく)。

求人票と就業規則で確かめること

求人票の記載だけでは中身はわかりません。面接や内定時に、手当か代理返還か、月額や年額の上限と期間、勤続年数や資格取得などの条件、途中で退職した場合の扱いを書面で確かめておきましょう。代理返還を導入している企業は、機構のホームページで地域・業種・企業名から検索できます。

就職のときに使える貸付も確認しておく

奨学金とは別に、介護の仕事に就くときに使える貸付もあります。どれも決められた期間働くと返済が全額免除され、窓口の多くは都道府県の社会福祉協議会や福祉人材センターです。修学資金と同じ国の貸付制度の枠組みで、金額は厚生労働省の案内で確認しました。

介護分野就職支援金と再就職準備金

介護の仕事が未経験の人は、初任者研修などを修了して介護職員等として就職すると、介護分野就職支援金(20万円以内)を借りられます。介護の経験が1年以上ある人が離職後に戻る場合は、再就職準備金(40万円以内)の対象です。どちらも介護職員等として2年間働くと返済が全額免除されます。

条件と申請の順番は介護職のブランク復職ガイド|再就職準備金・就職支援金の条件と準備、未経験から就職までの流れは介護職を未経験から始めるにはにまとめています。

実務者研修受講資金

働きながら介護福祉士を目指す人には、実務者研修受講資金もあります。厚生労働省の案内では貸付額は20万円以内で、介護福祉士として介護業務に2年間従事すると全額免除されます。研修の内容は実務者研修とは、資格の取得順は介護の資格一覧で紹介しています。

免除・支援を受けるときの注意点

返還免除も返済支援も、条件を満たしてはじめて負担が減る制度です。途中で働き方が変わると免除や支援が受けられなくなり、借りた分を返すことになる場合もあります。申し込む前に、要綱の返還や対象外の項目まで目を通しておきましょう。

条件を満たす前に辞めると返還になる

熊本県の要綱では、卒業から1年以内に登録や県内での就業をしなかったときや、県内で介護の仕事をする意思がなくなったときは修学資金を返還します。返還は一括か月賦の均等払いなどで、期間は貸付期間の2倍が上限です。貸付期間以上県内で従事した人には残りを免除できる規定もありますが、個別の判断で、特別な事情なく退職した人には適用されません。退職を考えたら先に貸付元へ相談してください。

県外への転職や支援の重複に注意する

熊本県の修学資金は県内で働くことが免除の条件で、法人の人事異動による県外勤務の期間は含まれますが、自分の意思で県外に移ると条件から外れます。名古屋市の返済支援も、異動で勤務先が市外になると対象外です。また名古屋市・浜松市・文京区は、奨学金を対象とする別の助成を受けている人を対象外としています。

進学・就職の前に確認したいチェック項目

使える制度は、奨学金を借りる時期と働く場所で決まります。同じ介護職でも、養成校に進む前と、すでに奨学金を返しながら働いている今とでは、申し込める窓口が違います。進学や就職の前に、次の点を確認しておきましょう。

  • これから借りるのか、すでに返済中か
  • 借りている奨学金の種類(日本学生支援機構、学校、自治体など)
  • 働く予定の都道府県・市区町村に修学資金や返済支援があるか
  • 勤め先の支援は手当か代理返還か、上限額と期間はいくらか
  • 免除や支援の条件となる勤務年数と、途中で辞めた場合の扱い

わからない点は、働く予定の自治体や貸付元の窓口に問い合わせてみてください。

まとめ

介護職の奨学金の負担を減らす方法は、これから学ぶ人向けの修学資金と、返済中の人向けの返済支援・代理返還に分かれます。どの制度も、一定の年数働くことが条件です。

  • 介護福祉士修学資金は学費月5万円以内などを借りられ、卒業後5年間(熊本県では過疎地域等は3年)介護業務に従事すると全額免除される
  • 東京都は年60万円・5年を上限に事業者へ補助し、令和8年度から代理返還も対象。交付申請は2026年11月20日必着が締切
  • 名古屋市は令和7年度の要綱で年15万〜30万円を最長5年、本人に助成する。修学資金は対象外
  • 代理返還は所得税が非課税となり得るが、手当方式は非課税とするのが難しいとされる

金額や締切は年度ごとに見直されるため、申し込む前に最新の要綱を確認してください。

よくある質問

Q. 介護職として働けば日本学生支援機構の奨学金は免除されますか?

A. 日本学生支援機構の奨学金に、介護の仕事に就くと返還が免除される仕組みはありません。返済中の方が使えるのは、自治体の返済支援と勤め先の代理返還です。働き続けて返済が免除されるのは、介護福祉士修学資金のような都道府県の貸付です。

Q. 修学資金を借りた県とは別の県で働けますか?

A. 熊本県の要綱では県内で働くことが免除の条件で、自分の意思で県外に就職すると返還の対象になります。法人の人事異動による県外勤務は免除期間に含めます。借りる前に、働く予定の地域が含まれるか要項で確かめてください。

Q. 東京都の奨学金返済・育成支援事業は自分で申し込めますか?

A. 申請するのは事業者で、職員本人は申し込めません。都内の事業所が返済相当額を手当として支給するか代理返還し、その費用を都が補助します。令和7年度に交付申請をした法人は東京都福祉保健財団のホームページで確認できます。

Q. 奨学金返済手当に税金はかかりますか?

A. 給与に上乗せされる手当は、所得税を非課税とするのは難しいと日本学生支援機構は説明しています。事業者が機構へ直接送金する代理返還であれば、所得税は非課税となり得て、社会保険料のもとになる報酬にも原則として含めません。給与に代えて返還する場合などは扱いが変わります。

Q. 修学資金と自治体の返済支援は併用できますか?

A. 名古屋市は、勤務条件によって返済が免除される資金を助成の対象から外しているため、修学資金は対象になりません。名古屋市・浜松市・文京区は、奨学金を対象とする別の助成を受けている人も対象外です。併用の可否は自治体ごとに要綱で決まるため、申し込む前に確認してください。

参考資料・出典

この記事を書いた人

編集部

介護ワーカーズナビ編集部

介護職向け情報メディアの編集チーム

厚生労働省などの公的統計や制度資料をもとに記事を作成しています。数値には出典と年度を記載し、制度が変わったときに内容を見直しています。

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