休憩に入ったとたんにナースコールが鳴る、1人夜勤で仮眠中も呼び出しに備えている。そんな夜が続き、違法ではないかと感じている介護職の方は少なくありません。
実際には、勤務表で休憩や仮眠と書かれていても、過ごし方によっては法律上の労働時間に当たり、割増賃金の対象になる場合があります。
この記事では、労働基準法の条文と最高裁判決、厚生労働省の資料をもとに、休憩と仮眠の線引き、1人夜勤や宿直との違い、取れなかった休憩の賃金、相談の進め方を整理しました。
夜勤のある施設で働く介護職の方に向けた内容です。
この記事でわかること
- 夜勤の休憩について労働基準法が定めていること
- 仮眠が労働時間に当たる条件と最高裁判決の考え方
- 1人夜勤と配置基準、宿直との違い
- 取れなかった休憩・仮眠の賃金と割増率
- 記録の残し方と相談先
夜勤で休憩が取れないのは違法か
休憩は労働基準法で長さと与え方が決まっており、取れない状態が続けば同法に反するおそれがあります。16時間前後の夜勤に当てはめた休憩の時間と、交代で取る休憩の条件を確認します。夜勤中の仕事の流れは介護職の夜勤の仕事内容|タイムスケジュール・きつさ・向いている人で紹介しています。
休憩は8時間を超えると1時間以上
労働基準法第34条第1項は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、勤務の始めや終わりではなく、労働時間の途中に与えるよう定めています。
16時間夜勤でも法律上の最低は1時間
第34条は8時間を超えれば一律で1時間以上としており、16時間の夜勤でも最低ラインは1時間です。1日8時間を超える夜勤は、第32条の2や第32条の4の変形労働時間制で、期間を平均して週40時間以内に収める形で組まれます。労働組合である日本医療労働組合連合会(日本医労連)の2025年介護施設夜勤実態調査では、2交代の休憩と仮眠は就業規則上の平均で2時間10分でしたが、1時間だけの施設もありました。
交代で取る休憩も自由に使えることが条件
休憩は一斉に与えるのが原則ですが(第34条第2項)、労働基準法施行規則第31条により、保健衛生の事業などは一斉でなくてもよいとされており、交代で休憩に入る形自体は問題ありません。一方で第34条第3項は、休憩を自由に利用させるよう定めています。厚生労働省のパンフレットも、代替要員の不足などで夜勤の休憩が確保されていない例を挙げ、確実な取得を求めています。
夜勤の仮眠は労働時間になるか
仮眠が労働時間に当たるかは、勤務表の名前ではなく、仕事から離れることが保障されているかで決まります。眠っていても、呼び出しに備えることを求められていれば話は変わります。厚生労働省のガイドラインと最高裁判決の考え方を、介護の夜勤に当てはめてみます。
呼び出しに備える時間は手待時間
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月)は、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間とし、指示があればすぐに業務に就くことを求められ、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間(手待時間)も労働時間に当たるとしています。労働時間かどうかは就業規則の定めにかかわらず、客観的に判断されるとも明記されています。
最高裁判決の判断の枠組み
仮眠時間についてよく参照されるのが、ビル管理会社の泊り勤務をめぐる大星ビル管理事件の最高裁判決(第一小法廷、2002年2月28日)です。判決は、実作業をしていない仮眠時間でも、労働契約上の役務の提供が義務付けられていれば労働からの解放が保障されているとはいえず、労働基準法上の労働時間に当たるとしました。この事件では、連続7〜9時間の仮眠中も仮眠室での待機と、警報や電話への直ちの対応が義務付けられていました。対応の必要が皆無に等しいなど、実質的に義務付けがないといえる事情もないとして、仮眠時間全体を労働時間と判断しています。
介護の夜勤で確かめたいポイント
この枠組みに沿うと、介護の夜勤では次のような点が判断の分かれ目になります。
| 確認する点 | 労働時間に当たりやすい例 | 休憩・仮眠と認められやすい例 |
|---|---|---|
| 呼び出しへの対応 | 仮眠中もナースコールやPHSに出ることになっている | 対応は起きている職員が担当すると決まっている |
| 場所の拘束 | フロアやその近くから離れられない | 休憩室や仮眠室で、業務から離れて過ごせる |
| 実際の中断 | 休憩中の対応がたびたび起きている | 対応が必要になることがほとんどない |
最終的な判断は個別の事情によります。仮眠中の対応を誰が受け持つのかを就業規則や勤務のルールで確かめておくと、職場と話し合う出発点になります。
1人夜勤(ワンオペ)は違法か
1人夜勤そのものを禁じる規定は、労働基準法にはありません。ただし1人で受け持つ職場では休憩を自由に使えない状態になりやすく、その時間が労働時間に当たるかが問題になります。配置基準と休憩のルールを分けて考えます。
配置基準で1人夜勤が認められる施設
夜勤の人数は、平成12年厚生省告示第29号や各サービスの運営基準で施設の種類ごとに最低ラインが決まっています。グループホームはユニットごとに1人以上、ユニット型の特養は2ユニットごとに1人以上で、1人で夜勤を受け持つ形が認められています。日本医労連の2025年調査では、2交代の職場の65.3%が1人体制で、グループホームや小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護はすべての職場が1人体制でした。
1人夜勤で休憩が取れないときの扱い
配置基準を満たしていても、休憩のルールが免除されるわけではありません。休憩中も呼び出しに応じなければならないなら、その時間は手待時間に当たる可能性があり、休憩を与えたことにはなりにくいと考えられます。同調査の報告書も、1人夜勤では仮眠はおろか休憩すらほとんど取れない状態になっていると指摘しています。
仮眠室の設置も決まっている
労働安全衛生規則第616条は、夜間に睡眠を与える必要があるときや、仕事の途中に仮眠できる機会があるときは、男性用と女性用に分けた睡眠・仮眠の場所を設けるよう事業者に求めています。同調査では仮眠室がない施設が27.2%ありました。
宿直と夜勤の違い
夜間の勤務には、通常の業務を行う夜勤のほかに宿直という扱いがあります。宿直は労働時間や休憩の規定が適用されなくなる特別な扱いで、認められる条件は限られています。勤務表で宿直と呼ばれていても、条件を満たすとは限りません。
宿直は労働基準監督署の許可が前提
労働基準法第41条第3号と施行規則第23条により、断続的な宿直は所轄の労働基準監督署長の許可を受けた場合に限り、労働時間や休憩の規定が適用されません。労働局の資料によると、許可基準は、常態としてほとんど労働する必要がない勤務であること、宿直手当が同種の労働者の賃金の1人1日平均額の3分の1以上であること、宿直は原則として週1回までであることなどです。
社会福祉施設の宿直で認められる業務
岩手労働局の資料によると、社会福祉施設の宿直で認められる業務は、一般の宿直業務のほかには、少数の入所者への夜尿起こし、おむつの取替え、検温などの軽度かつ短時間の作業に限られます。要介護者を抱きかかえるなど身体に負担がかかる場合は軽度に含まれず、短時間とは1回の勤務中に1〜2回、1回10分程度までとされています。
許可がない、または実態が夜勤なら
東京労働局の資料は、夜勤を夜間に通常勤務と同様の業務を行うものとし、宿直とは区別しています。巡視や排泄の介助などを一晩中くり返す勤務は、宿直と呼ばれていても許可基準に当てはまりにくく、許可がなければ通常の労働時間です。宿直とされている場合は、許可の有無を事業所に確かめてください。
取れなかった休憩・仮眠の賃金
取れなかった休憩や仮眠の時間が労働時間に当たれば、法定の時間外や深夜に当たる部分には割増賃金の支払いが必要です。深夜割増と時間外割増の率、夜勤手当との関係を、前述の最高裁判決の考え方とあわせて順に確認します。
労働時間なら深夜割増の対象
労働基準法第37条第4項は、午後10時から午前5時までの労働に、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払うよう定めています。例えば時給換算1,500円の人が午前2時から3時の休憩を取れずに働いた場合、その1時間には深夜割増として375円以上が付く計算です。
時間外になる場合の割増率
法定の枠を超えて働いた時間には、第37条第1項と政令により25%以上、1か月60時間を超える分は50%以上の時間外割増が必要です。時間外と深夜が重なる時間は、施行規則第20条により合わせて50%以上です。変形労働時間制でも、1日8時間を超えるシフトの日はシフトで決めた時間を超えた分が時間外の対象になります。
夜勤手当に含まれていると言われたら
大星ビル管理事件の判決は、仮眠時間が労働時間に当たれば通常は労働契約上も賃金の対象になるとしつつ、具体的な額は契約の定めによるとしました。そのうえで、契約に定めがなくても、法定の時間外や深夜に当たる部分には第37条の割増賃金を払う義務があるとしています。夜勤手当は施設が独自に設ける手当で、日本医労連の2025年調査では2交代で1回平均5,973円でした。手当の相場は介護職の夜勤手当はいくら?相場・回数・2交代と3交代の違いで解説しています。給与明細と就業規則で、手当が何に対する支払いなのかを確かめてください。
休憩が取れないときに職場でできること
休憩が取れない状態を変えるには、記録をもとに話し合いを進めるのが近道です。感覚だけで訴えるより、いつ、どの業務で休憩が中断されたかを示せるほうが、職場も改善策を考えやすくなります。記録の残し方と相談の順序を紹介します。
休憩・仮眠の記録の残し方
前述のガイドラインは、始業・終業時刻を確認して記録する責務が使用者にあるとしています。職員自身も次のような記録を残しておくと、相談の場で状況を伝えやすくなります。
- 夜勤の日付と、勤務表上の休憩・仮眠の時間帯
- 休憩が中断された時刻と、対応した業務の種類
- 就業規則や勤務表、給与明細の控え
利用者の氏名や状態など、個人情報は個人のメモに書き写さないようにしてください。
相談の順序は上司から事業所へ
まず夜勤の責任者や上司に、記録をもとに状況を伝えます。休憩時間帯の固定、仮眠中の呼び出しを受け持つ職員の明確化、人手が足りない日の応援体制など、改善策を一緒に示すと話が進みやすくなります。解決しなければ施設長や本部の人事担当に相談します。夜勤明けの日と休日の関係は介護職の年間休日は何日?施設別の平均と求人票の読み方を解説、休みの確保は介護職の有給休暇|付与日数・取り方のコツ・パートの有給と退職時の消化も参考になります。
労働基準監督署と労働条件相談ほっとライン
職場で改善が見込めないときは、施設を管轄する労働基準監督署に相談できます。夜間や休日は、厚生労働省の委託事業である労働条件相談ほっとライン(0120-811-610)が使えます。受付は平日17時から22時、土日祝日9時から21時で、匿名でも相談できますが、事業場への指導はできません。働き続けるか迷うときは、介護職を辞めたいと感じたら|理由別の対処法と辞め時の判断基準も参考にしてください。
まとめ
夜勤の休憩は、8時間を超える勤務なら1時間以上を勤務の途中に与え、自由に使わせることが労働基準法のルールです。呼び出しに応じる義務がある仮眠や休憩は、最高裁判決の考え方では労働時間に当たる可能性があり、深夜や時間外に当たる部分には割増賃金が必要です。1人夜勤でも休憩のルールは変わりません。まずは休憩が中断された記録を残し、上司、事業所、労働基準監督署の順に相談してみてください。
よくある質問
Q. 16時間夜勤の休憩は何時間必要ですか?
A. 労働基準法第34条は、労働時間が8時間を超える場合に少なくとも1時間の休憩を求めており、16時間の夜勤でも法律上の最低は1時間です。実際の時間は就業規則で決まり、日本医労連の2025年調査では2交代の休憩と仮眠の合計は平均2時間10分でした。
Q. 仮眠中にナースコールに出たら、その時間は労働時間ですか?
A. 対応した時間は労働時間です。さらに、仮眠中も呼び出しに応じることが義務付けられている場合は、呼ばれなかった時間も含めて労働時間に当たる可能性があります。最高裁判所の2002年2月28日の判決は、仮眠室での待機と直ちに対応する義務を理由に仮眠時間を労働時間と判断しています。
Q. 1人夜勤で休憩が取れないのは違法ですか?
A. 1人夜勤そのものを禁じる規定は労働基準法にありませんが、休憩を与えないことは第34条に反するおそれがあります。休憩中も呼び出しに応じる必要があるなら、その時間は労働時間に当たる可能性があり、割増賃金の対象になり得ます。具体的な判断は労働基準監督署に相談できます。
Q. 取れなかった休憩の賃金はさかのぼって請求できますか?
A. 賃金の請求権の時効は、労働基準法第115条と第143条第3項の経過措置により当分の間3年です。請求には、休憩が取れなかった日時を示す記録が役立ちます。日付と中断の時刻のメモを、勤務表や給与明細の控えと一緒に残しておきましょう。
参考資料・出典
- 労働基準法 第32条・第32条の2・第32条の4・第34条・第37条・第41条・第115条・第143条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働基準法施行規則 第20条・第23条・第31条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
- 労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/406CO0000000005
- 労働安全衛生規則 第616条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
- 最高裁判所第一小法廷 平成14年2月28日判決(平成9年(オ)第608号 割増賃金請求事件) https://www.courts.go.jp/hanrei/52614/detail2/index.html
- 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省、2017年1月20日) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf
- 介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署、2017年2月) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000064728.pdf
- 断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外許可申請について(岩手労働局) https://jsite.mhlw.go.jp/iwate-roudoukyoku/content/contents/shukunittyoku.pdf
- 医療機関における宿日直の許可基準について(東京労働局労働基準部監督課) https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/001286640.pdf
- 厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準(平成12年厚生省告示第29号、厚生労働省法令等データベース) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa0263&dataType=0&pageNo=1
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号) https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100034
- 2025年介護施設夜勤実態調査結果~報告集~(日本医療労働組合連合会『医療労働』No.698、2026年3月) https://irouren.or.jp/research/2f4e72b66c0cced0b97d1d532a3929318192c380.pdf
- 労働条件相談ほっとライン(厚生労働省) https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/lp/hotline/
※法令・制度の情報は2026年10月時点のものです。














