リーダーや主任を任されるようになると、その先の施設長や管理者という役職が気になり始めます。求人票の「管理者候補」を見て、自分の資格や経験で応募できるのか迷う方もいるでしょう。施設長・管理者の要件は施設の種類ごとに省令や法律で決まっており、資格が要らない事業所もあれば、医師や主任ケアマネジャーが原則の施設もあります。この記事では、2026年11月時点の条文をもとに施設種別ごとの要件を一覧にし、介護職から目指す3つのルート、研修と講習の受け方、2024年度改定で明確化された兼務の範囲までまとめました。施設長や管理者を目指す介護職の方と、管理者候補の求人を検討している方に向けた内容です。
この記事でわかること
- 施設種別ごとの施設長・管理者の要件と根拠条文
- 介護職から施設長・管理者を目指す3つのルート
- 認知症対応型サービス事業管理者研修と社会福祉施設長資格認定講習課程の受け方
- 2024年度改定で明確化された管理者の兼務範囲と、求人票の「管理者候補」の見方
施設長・管理者の要件は施設の種類で決まる
介護施設の責任者に就くための全国一律の資格はありません。サービスの種類ごとに人員や運営の基準が省令で定められ、その中で管理者の要件が個別に書かれています。最初に、呼び方の違いと、資格や研修が要るかどうかを押さえておきましょう。
施設長と管理者の違い
特別養護老人ホーム(特養)では、老人福祉法にもとづく基準で施設の長を「施設長」と呼び、介護保険の基準では同じ立場を「管理者」と呼びます。デイサービスなどの責任者は基準上の「管理者」で、職場によっては所長やホーム長と呼ばれます。施設の種類そのものの違いは介護施設の種類と違いで整理しています。
資格や研修が要る施設と要らない事業所
資格・経験・研修が条文で求められるのは、特養、介護老人保健施設(老健)、グループホーム、小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援事業所です。通所介護(デイサービス)、訪問介護、特定施設の指定を受けた有料老人ホームの管理者には、介護保険の基準上の資格要件がありません。
施設種別ごとの要件一覧【根拠条文つき】
施設長・管理者の要件を、根拠となる条文とあわせて一覧にしました。条文はe-Gov法令検索で2026年11月時点の内容を確認しています。自治体が条例で基準を加えている場合もあるため、実際の判断は所在地の都道府県・市町村に確認してください。
| 施設・事業所 | 根拠 | 施設長・管理者の要件 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 特養基準第5条第1項 | 社会福祉主事の要件、社会福祉事業2年以上、同等以上の能力のいずれか |
| 介護老人保健施設 | 介護保険法第95条 | 知事の承認を受けた医師。承認があれば医師以外も可 |
| グループホーム | 地域密着型基準第91条第3項 | 認知症介護の経験3年以上と厚生労働大臣が定める研修の修了 |
| 小規模多機能型居宅介護 | 地域密着型基準第64条第3項 | グループホームと同様 |
| 通所介護(デイサービス) | 居宅基準第94条 | 常勤・専従。資格要件なし |
| 訪問介護 | 居宅基準第6条 | 常勤・専従。資格要件なし |
| 有料老人ホーム(特定施設) | 居宅基準第176条 | 専従。資格要件なし |
| 居宅介護支援事業所 | 居宅介護支援基準第3条第2項 | 主任介護支援専門員(例外・経過措置あり) |
特別養護老人ホームの施設長
特養の施設長は、特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準第5条第1項で要件が決まっています。社会福祉法第19条第1項各号に当たる者(社会福祉主事の任用要件を満たす者。社会福祉士を含む)、社会福祉事業に2年以上従事した者、これらと同等以上の能力がある者のいずれかです。厚生労働省の2004年の資料では、3つ目にあたる例として社会福祉施設長資格認定講習会の受講者が挙げられています。細かな基準は自治体で異なる場合があるため、所管の自治体の案内も確認しましょう。
介護老人保健施設の管理者
老健は介護保険法第95条第1項で、都道府県知事の承認を受けた医師に管理させることが原則です。同条第2項により、知事の承認を受ければ医師以外の者に管理させることもできます。医師以外を認めるかどうかは都道府県が個別に判断します。
グループホーム・小規模多機能の管理者
グループホームの管理者は、指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準第91条第3項で、特養・老人デイサービスセンター・老健などの従業者や訪問介護員等として3年以上認知症の人の介護に従事した経験と、厚生労働大臣が定める研修の修了が求められます。小規模多機能型居宅介護も第64条第3項で同じ要件です。職場の様子はグループホームの仕事内容で紹介しています。
デイサービス・訪問介護・有料老人ホーム・居宅介護支援
デイサービス(居宅基準第94条)と訪問介護(同第6条)の管理者は常勤・専従が条件で、資格の定めはありません。訪問介護の解釈通知も、管理者は訪問介護員等である必要はないとしています。有料老人ホーム(同第176条)も専従が条件で、資格要件はありません。
居宅介護支援事業所の管理者は、居宅介護支援基準第3条第2項で主任介護支援専門員と定められています。主任ケアマネの確保が著しく困難な場合などは、例外として介護支援専門員を管理者にできます。また、2021年3月31日時点で主任ケアマネでない管理者がいた事業所は、平成30年厚生労働省令第4号附則第3条により、その管理者が2027年3月31日まで続けられます。デイの職種構成はデイサービスの仕事内容、訪問介護の現場責任者はサービス提供責任者とは、ケアマネへの道はケアマネになるにはで解説しています。
介護職から施設長・管理者を目指す3つのルート
介護職が現場経験を生かしやすい道は、特養の施設長、グループホームの管理者、デイサービスや訪問介護の管理者の3つです。どれを目指すかで、先にそろえる資格や研修が変わります。自分の勤務先で開ける道から考えると、準備の順番が決めやすくなります。
社会福祉主事任用資格を取って特養の施設長へ
特養の施設長要件のうち、介護職が働きながら満たしやすいのが社会福祉主事任用資格です。全国社会福祉協議会中央福祉学院の社会福祉主事資格認定通信課程は1年間で、通信学習と連続3日間の集合研修があります。社会福祉事業や介護保険の指定事業所で働いていることが条件で、申込は勤務先の所属長が行います。大学で厚生労働大臣が指定する科目を修めて卒業した人は、すでに任用資格を満たしている場合があります。
社会福祉事業に2年以上従事したことでも要件を満たせます。社会福祉法第2条の社会福祉事業には、特養の経営や老人デイサービス事業、老人居宅介護等事業などが含まれます。どの勤務歴を数えるかは自治体が判断します。この資格は生活相談員の要件でもあります(生活相談員とは)。
認知症介護の経験3年と研修でグループホームの管理者へ
グループホームで働いている介護職の方は、認知症の人の介護経験を3年積み、認知症介護実践者研修、認知症対応型サービス事業管理者研修の順に修了します。管理者研修は実践者研修の修了が受講の条件です。実践者研修を修了するとグループホームの計画作成担当者にも就けるため、グループホームのケアマネ(計画作成担当者)を経て管理者に進む人もいます。
リーダー・主任からデイサービスや訪問介護の管理者へ
デイサービスや訪問介護の管理者には資格要件がないため、法人内でリーダーや主任を務めた人が任されることがあります。ただし求人票では、介護福祉士や実務経験の年数を応募条件にする法人もあります。訪問介護では、サービス提供責任者を経てから管理者になる道もあります。
管理者研修と施設長資格認定講習の受け方
施設長や管理者の要件に関わる研修は、個人では申し込めないものが多くあります。受講の時期と窓口を早めに把握しておくと、就任に間に合わせやすくなります。受講料は実施機関や年度で違うため、その年度の要項で確認してください。
認知症対応型サービス事業管理者研修
グループホームなどの管理者に必要な研修で、都道府県や指定都市が実施します。鹿児島市の令和8年度の案内では、新たに管理者に就こうとする者が対象で、認知症介護実践者研修の修了が条件です。申込書には法人印が要り、受講料は10,000円でした。新潟県の令和8年度は2日間のオンライン研修で、所属する事業所が電子申請で申し込み、期限は7月30日でした。実践者研修の内容は認知症介護実践者研修とはで詳しく解説しています。
社会福祉施設長資格認定講習課程
施設長要件を満たしていない人のための講習で、中央福祉学院が実施しています。対象は就任予定がおおむね5年以内の人か就任済みの人で、就任予定が不確定だと受講できません。受講期間は4月から1年間で、4学期制の通信学習と連続5日間の集合研修があり、経営管理、人事・労務管理、財務管理などを学びます。
申込書には所属長の署名と公印が要り、提出先は中央福祉学院か都道府県などの担当部局です。令和8年度の受講料は105,600円で、青森県の締切は2026年4月6日でした。2026年11月時点で令和8年度の募集は終わっており、令和9年度は準備中です。
2024年度改定の兼務範囲と管理者の仕事
管理者になると、事業所全体の運営に責任を持つことになります。2024年度の介護報酬改定では、管理者の責務と兼務できる範囲が明確化されました。どこまで兼務でき、日々どんな仕事を任されるのかを確認しておきましょう。
同一敷地内でなくても兼務できるようになった
厚生労働省の「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」は、全サービス共通で管理者の兼務範囲を明確化しました。管理者が責務を果たせる場合には、兼務先は同一敷地内の事業所・施設でなくても差し支えないとされ、2024年4月1日に施行されています。管理者の責務は、サービス提供の場面で起きることを適時かつ適切に把握し、職員と業務を一元的に管理・指揮命令することと示されました。
解釈通知では、同じ事業者が設置した他の事業所の職務と兼ねる形で示されています。ただし訪問介護の解釈通知は、管理する事業所数が過剰な場合や、事故などの緊急時に管理者がすぐ現場へ駆け付けられない体制の場合を、管理業務に支障がある例として挙げています。
管理者が担う人員基準・運営指導・事故・BCP
管理者の仕事は、人員基準を満たすシフトの管理、職員の採用と育成、介護報酬の請求、自治体の運営指導への対応、事故や苦情の記録と報告などです。2024年度からは業務継続計画(BCP)の策定と研修・訓練、虐待防止の研修も義務になりました。年間の研修計画づくりは介護施設の法定研修一覧が参考になります。
求人票の「管理者候補」の見方
求人票の「管理者候補」は、入職後しばらく現場やリーダーとして働き、条件が整った段階で管理者に就く前提の募集です。就任の条件が書かれていないと、思っていた役割と違うこともあります。応募前に確認したいのは、次の2点です。
就任時期と必要な研修の受講時期
グループホームや小規模多機能の管理者候補なら、認知症介護の経験3年と2つの研修がそろうまで管理者に就けません。研修は勤務先からの申込が前提です。面接では、就任予定の時期と、研修を法人の負担と業務扱いで受けられるかを確かめておきましょう。
兼務の範囲と法人内の役職の関係
管理者と生活相談員や介護職員の兼務、複数事業所の兼務があるかどうかで、仕事の量は大きく変わります。求人票に「兼務あり」とあれば、どの事業所の何の職務と兼ねるのかを確認してください。公立施設の採用は民間と仕組みが違うため、介護職が公務員になるにはで整理しています。
まとめ
介護施設の施設長・管理者の要件は、施設の種類ごとに省令や法律で決まっています。
- 特養の施設長は社会福祉主事の要件、社会福祉事業2年以上などのいずれか
- 老健は原則として医師、グループホーム・小規模多機能は認知症介護3年以上と研修の修了
- デイサービス・訪問介護・有料老人ホームは資格要件なし、居宅介護支援は主任ケアマネが原則
- 2024年4月から、同一敷地外の事業所とも兼務できることが明確化された
目指す施設の種類を決め、必要な資格や研修を勤務先と相談しながらそろえていきましょう。
よくある質問
Q. 無資格でもデイサービスの管理者になれますか
A. 条文上はなれます。指定居宅サービス等の基準第94条は、通所介護の管理者に常勤・専従を求めるだけで、資格の定めはありません。ただし、法人が独自に介護福祉士や実務経験を条件にしている場合があります。単独型・併設型の認知症対応型通所介護の管理者は、地域密着型基準第43条第2項で厚生労働大臣が定める研修の修了が必要です。
Q. グループホームの管理者研修は個人で申し込めますか
A. 多くの自治体では個人では申し込めません。新潟県や鹿児島市の令和8年度の案内では、受講者が所属する事業所が申し込む仕組みです。前提となる認知症介護実践者研修も勤務先経由の申込が一般的なので、まずは職場の管理者に相談してください。
Q. 施設長と理事長はどう違いますか
A. 理事長は社会福祉法人や医療法人など法人全体の代表で、理事会で選ばれます。施設長は法人が運営する個々の施設の運営責任者で、特養なら特養基準第5条の要件を満たす必要があります。理事長が施設長を兼ねる法人もありますが、役割は別のものです。
Q. 看護師は施設長や管理者になれますか
A. 施設の種類によります。デイサービスや訪問介護の管理者には資格要件がありません。老健は医師が原則ですが、介護保険法第95条第2項により知事の承認があれば医師以外も就けます。特養の施設長は第5条の要件を満たす必要があります。グループホームの経験年数については、新潟県の令和8年度要項が一般病院での看護経験を認知症介護の経験に含めないとしているため、指定権者に確認してください。
Q. 施設長になると年収はいくらになりますか
A. 施設長・管理者の給与を集計した公的な統計は、2026年11月時点で確認できません。厚生労働省の令和6年度介護従事者処遇状況等調査も、職種別の集計に管理者の区分はありません。役職手当や賞与の扱いは法人ごとに違うため、求人票や面接で確認してください。
参考資料・出典
- 特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第46号)第5条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100046
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第21条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100039
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第95条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
- 社会福祉法(昭和26年法律第45号)第2条・第19条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000045
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第43条・第64条・第91条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100034
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第6条・第94条・第176条、令和6年厚生労働省令第16号附則第1条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第3条、平成30年厚生労働省令第4号附則第3条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100038
- 令和6年度介護報酬改定における改定事項について(厚生労働省老健局、2024年)https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230633.pdf
- 指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について 改正新旧(厚生労働省、2024年)https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001227935.pdf
- 令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果(厚生労働省、2025年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/index.html
- 施設長の資格要件等(厚生労働省、2004年)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/02/s0223-8d18.html
- 令和8年度第1回認知症対応型サービス事業管理者研修の申込案内(鹿児島市、2026年度)https://www.city.kagoshima.lg.jp/kenkofukushi/chouju/shisetu/documents/r8_1_kanrisha_entryyouryou.pdf
- 令和8年度第1回新潟県認知症対応型サービス事業管理者研修の受講者を募集します(新潟県、2026年)https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kourei/13568534426.html
- 社会福祉施設長資格認定講習課程(全国社会福祉協議会中央福祉学院)https://www.gakuin.gr.jp/training/course_shisetucyousikaku/
- 社会福祉主事資格認定通信課程 民間社会福祉事業職員課程(全国社会福祉協議会中央福祉学院)https://www.gakuin.gr.jp/training/course_spring/
- 令和8年度社会福祉施設長資格認定講習課程の受講案内について(青森県、2026年)https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/kkenkofu/syafuku_kenshu.html














